六人分の入場印
「契約巨兵は六人パーティー以外、攻撃権なし」
「入口の印章が六つ。ソロじゃ部屋にすら入れない」
「早乙女慧、視聴者参加型ってそういう意味じゃないぞ」
早乙女慧は閉ざされた青銅扉の前で、配信のゲスト枠を六つ開いた。
契約巨兵ノタリウスは、入場者六名の署名を受けて初めて戦闘契約を結ぶ。五人以下なら、攻撃はすべて“無権限行為”として無効化される。分身や召喚獣は本人と同一扱い。七人以上なら契約そのものが破棄される。人数そのものが鍵だった。
慧の固有スキル《共同出演》は、ゲストとして承認した視聴者のアバターを、配信範囲内へ一秒だけ投影できる。
触れられるのは配信設備だけ。戦えないため、イベント用の余興と見なされていた。
「六人の視聴者を呼ぶのか」
「アバターは戦闘員判定されない」
「でも印章、配信設備の一種じゃない?」
六つのゲスト申請が届く。表示名は《初見》《通勤中》《母の端末》など、どこにでもいる視聴者ばかりだった。慧は有名配信者も高レベル冒険者も待たない。この攻略に必要なのは強さではなく、席に手を置く意思だけだ。
慧は名前も知らない視聴者を選ばず、最初に並んだ六人をまとめて承認した。
一度のタップ。
半透明のアバターが六体現れ、それぞれ扉の印章へ手を置いた。印章は古代の“遠隔参加盤”。配信設備として判定され、六つすべてが青く灯る。
扉が開く。
内部の契約巨兵が立ち上がったが、胸の契約書には《入場者七名》と記録されていた。配信主として扉へ自動登録されていた慧一人と、署名だけを残した六人。開門装置は六つの印だけを見たが、戦闘契約は主催者まで数えた。巨兵自身が定めた上限を超えている。
《契約違反。執行主体を破棄します》
機械音とともに、巨兵は自分の胸から契約核を抜き、粉々に砕いた。鎧はその場で崩れ、慧は一歩も戦闘室へ入らないまま討伐通知を受け取った。
「人数不足を解消したら、今度は七人扱いで自壊!」
「アバターは入場者、でも戦闘参加者ではない」
「攻撃回数ゼロ。承認操作一回」
「これ、ソロ判定どうなる?」
数秒の審査後、画面に回答が出た。
【公式区分:単独討伐/協力者六名は“視聴者”として記録】