冬至祭をやめた日
エヴァン領では毎年、冬至祭のために村の食料が空になった。
前領主が豪華さを競わせ、一戸につき鶏一羽、麦一袋、酒一壺を強制したからだ。祭りの翌朝、館には残飯が積まれ、村では薄い粥が続いた。
新領主ノアは、祭りの十日前に命令書を破った。
「今年の献納はゼロ。参加も自由です」
村人たちは喜ぶより先に疑った。後から別の税を取られると思ったのだ。ノアは広場へ二つの箱を置いた。
一つは祭りの鍋。持ち寄りたい家だけ、食材を一品。
もう一つは冬備え箱。余裕のある家だけ、保存食を一つ。
どちらへ入れても名前は掲示するが、量の多寡は順位にしない。領地税は収穫の一割で固定し、冬至祭とは切り離す。備え箱は家族人数で配り、領主館も例外なし。
「何も出さない家が得をする」
酒造家が言う。
「出せない年に受け取り、出せる年に戻す。それを得と呼ぶなら、皆が一度は得をするでしょう」
祭り当日、何も持参できなかった老婆が広場の外で立ち止まった。去年までは献納できない家に罰金があったからだ。
ノアは彼女を特別席へ招かず、空いている丸太を示した。鍋の札には「一人一椀」としか書かれていない。出した品の量と、食べる権利は結びつけない約束だった。
老婆はやがて座り、代わりに鍋を混ぜる長杓子を取った。それも義務ではなく、彼女自身が選んだことだった。
広場には小さな鍋しかなかった。だが肉屋が骨を、農婦が豆を、薬師が香草を入れた。酒造家は酒一壺ではなく、酢漬け玉葱を二瓶、冬備え箱へ置いた。
誰も命令されていない。量を競う役人もいない。子どもは薪を拾い、老人は鍋を混ぜた。食べる分だけ椀に取り、残りは翌朝の食堂へ回した。
夜が深まり、ノアは領主席ではなく火のそばの丸太へ座った。豪華な音楽はなかったが、鍋はきれいに空になった。
帰り際、村人たちは備え箱の上へ看板を載せた。
――春まで開ける箱。
祭りの灯が消えた後も、その箱だけは、誰かの善意ではなく皆の約束として広場に残った。