同じ番号の別の扉

江波戸佳澄は、番号のない壁を横へ押した。舞台装置のように壁面が滑り、その裏からもう一枚の「3」が現れる。彼女は小さな貨物用扉を開き、身を屈めて通り抜けた。

黒岩辰巳と三輪遥は、正面の三番扉の前で互いを押さえ込んでいた。

「三番はここだ!」

辰巳の叫びに、佳澄は貨物通路から答える。

「ここにもある」

規則は単純だった。

――三番と表示された番号付き扉を最初に通過した者を勝者とする。

正面には一、二、三。誰もが「三番扉」は一枚だけだと思った。辰巳と遥は三の前を奪い合い、佳澄が壁際へ離れたのを諦めたと見なした。

佳澄は開始前、床の細い車輪跡に気づいていた。壁の一部が動く。さらに進行役の鍵束には、同じ「3」の札が二枚付いていた。一枚は正面扉、もう一枚は搬入口の鍵だ。

舞台の裏には、機材を運ぶための貨物扉がある。そこにも管理番号として三が表示されていた。主催者は正面だけを競技対象にしたつもりで、裏口の番号を外し忘れたのだ。

「貨物口は参加者用じゃない!」

遥が叫ぶ。

「規則は人間用とも、正面の一枚とも言っていない」

貨物扉は低いが、佳澄の全身が通れる。センサーも付いている。機材の搬入記録を取るためのものだ。彼女が敷居を越えると、正面の三番より先に通過時刻が刻まれた。

貨物扉の3は正面より小さいが、「表示」の大きさまでは指定されていない。

辰巳がようやく遥を振り払い、正面扉を開く。しかし記録は〇・八秒遅い。

〈三番表示扉、第一通過を確認。江波戸佳澄〉

機械音声に、辰巳は「同じ番号を二つ置くな」と怒鳴った。

佳澄は貨物通路の暗がりで、外れた首輪を持ち上げる。

「一つしかないと思ったから、二人で一枚を奪い合ったのよ」

主催者は沈黙した。正面の三番を豪華に飾り、参加者の視線を集めたこと自体が、裏の簡素な三番を隠していた。

貨物扉が閉じる。

最後に見えた勝者灯は、二枚ある三番のうち、地味な方だけを緑に照らしていた。