四十七ページから

透羽は、本も仕事も表紙で選んだ。タイトル、肩書き、会社名、第一印象。分かりやすいものを選べば、選んだ理由を人に説明できる。反対に、胸が動いただけの選択は、幼くて無責任なものに思えた。両親に転職を話す場面を想像するたび、有名な会社名なら説明が短く済む、と考えた。

書店員として働く彼女の前に、表紙を全部裏返した本を積む旅人が現れた。背表紙には布が巻かれ、題名も著者名も見えない。旅人はレジへ来ると、一冊だけ差し出した。

「この町で、いちばん似合わない表紙をつけてください」

「中身を知らないと選べません」

「中身を知ってからでは、似合う表紙しか選べないでしょう」

話が噛み合わない。透羽が困っていると、旅人は本を開き、四十七ページを示した。そこには、知らない言語の短い詩と、鳥の足跡のような挿絵がある。

「題名を見る前に、四十七ページだけ読んでください。今日、何か一つ」

旅人は店の包装紙を自分で巻き、題名のない本を抱えて去った。代金の代わりに、古い図書カードを置いていったが、もちろん使えなかった。

閉店後、透羽は休憩室で転職サイトを開いた。大手出版社の求人だけを保存し、名前を聞いたことのない会社は飛ばしている。今の書店を辞めたいというより、もっと説明しやすい場所へ移りたかった。

画面の下に、小さな編集プロダクションの募集が出た。「旅行冊子と地域史の制作。未経験可」。会社名も実績も知らない。給与欄も目立たず、洗練された採用写真もない。いつもなら、怪しい理由を探す前に閉じる。

透羽は旅人の本を思い出し、募集要項を途中からスクロールした。四十七行目を数える。そこには「最初の仕事は、廃線になった駅の聞き書き」とあった。

胸の奥で、何かが小さく動いた。祖父が駅員だったことも、子どもの頃に切符を集めていたことも、履歴書には書いたことがない。

会社の表紙はまだ分からない。四十七行目だけで決めるわけにもいかない。待遇も不安だ。応募する理由をうまく説明できる自信もない。

透羽は企業名を検索する前に、四十七行目の下にある「応募フォームを開く」を押した。