土曜日の受取窓
室井瑛は、家にいる日を「何もない日」と呼んでいた。
そのため友人から宅配便の受け取りを頼まれることが多い。近所に住んでいるし、在宅勤務もある。荷物一つなら、と引き受けるうち、午前指定のために外出をやめたり、インターホンが鳴るまで風呂を待ったりした。
配達が遅れると、瑛は頼んだ友人より先に配送状況を調べた。自分の休日なのに、遅延へまで責任を感じる。受け取りを終えた写真を送るまで、ソファに座っていても休んでいる気がしなかった。
木曜、友人から大型家具の配送通知が転送されてきた。
《土曜の九時から十八時の間。うちで受け取ってもらえる? 鍵はポストに入れとく》
瑛の土曜に予定はなかった。目覚ましをかけず、図書館へ行くかもしれない。それだけだ。九時間家にいることも不可能ではない。
《大丈夫》と入力する。友人の部屋まで徒歩五分。断れば配送日を変える手間がかかる。
窓の外では、向かいの建物の洗濯物が風に揺れていた。瑛は先週、自分の荷物を受け取るために半日待ったばかりで、そのあいだ何度も時計を見た。家にいるのに、家が待合室になる感じが嫌だった。
瑛は文章を消した。
《その時間は受け取れない。配送日の変更をお願いします》
友人から《家にいないの?》と返る。
瑛は説明を書き始めた。図書館へ行くかもしれないこと、疲れていること、前にも受け取ったこと。どれも「それなら少しだけ」と返されそうだった。
《家にはいるかもしれないけど、引き受けられない》
送ると、しばらくして《了解、日曜に変える》と来た。
瑛は変更できたか確認しそうになり、メッセージを閉じた。配送会社とのやり取りは、もう友人の予定の中にある。
土曜の朝、瑛は八時に目を覚ました。どこへも行かず、もう一度眠った。昼前に起きても、インターホンを気にして静かに歩く必要はない。
窓を開けると、外の風がカーテンを持ち上げた。誰かの荷物が来ない一日は、何もないのではなく、瑛がどこへ動いてもよい幅を持っていた。