好きな人の隣のその隣
席替えで、親友が僕の好きな人の隣になった。
僕はそのさらに隣。
近いのに、間に一人いる。先生が番号を読み上げた瞬間、親友は僕を見て、申し訳なさそうな顔をした。僕は笑って親指を立てた。
最初の数日は、三人でよく話した。好きな人が分からない問題を親友に聞き、親友が僕へ回す。僕が答えると、親友の功績になる。昼休みには二人の会話が僕の前を通り過ぎる。
親友は気を遣い、何度も席を替わろうと言った。
「先生にばれる」
「休み時間だけ」
「いいよ」
本当はよくなかった。でも、譲ってもらえば、好きな人の隣に座ることより自分の嫉妬のほうが目立つ気がした。
ある日、好きな人が休んだ。
空席をはさんで、僕と親友が並んだ。
「怒ってる?」
「何で」
「俺が楽しそうだから」
否定できなかった。
親友は机に額をつけた。
「俺、あの子のこと好きじゃないよ」
「知ってる」
「じゃあ」
「好きじゃなくても、話せるだろ。僕より」
言葉にすると、情けなかった。
親友はしばらく黙り、それから空席の机を少し前へ押した。僕らの顔が直接見えるようになった。
「俺が話せるの、お前が隣にいるからだよ」
三人の話題を作っているのは、いつも僕だという。好きな人が笑うのも、僕の返しを待っているからだと親友は言った。
「自分だけ、会話の外にいると思ってた?」
僕はうなずいた。
「真ん中にいるよ」
翌日、好きな人が戻ってきた。机が少し前へ出ているのを見て、「私だけ仲間外れ?」と笑った。
僕らは三つの机を横一列に戻した。
放課後、親友が先に帰り、僕と好きな人が残った。二人きりになると、急に話せなくなった。
彼女が言った。
「真ん中がいないと静かだね」
「僕、端だけど」
「会話の真ん中」
同じ言葉だった。親友から聞いたのかと思ったが、彼女は不思議そうな顔をした。
「次の席替え、隣になれるといいね」
「誰と?」
聞くと、彼女は僕の机を指で軽く叩いた。
「くじに聞いて」
好きな人の隣のその隣は、外れではなかった。
僕が二人をつなぐ場所で、二人から見つけてもらう場所だった。