屋根の上にもう一枚の屋根

砂都の診療所では、昼になると患者が治療室から逃げ出した。石の屋根が太陽で焼け、室温は四十三度。薬蝋は棚で溶け、医師は一時間ごとに交代しなければ倒れた。

異郷の建築家サルハは、屋根を壊さず、その上に軽い日除け屋根をもう一枚架けた。二枚の間は腕一本ぶん空け、端を開けておく。直射を上の屋根で受け、温まった空気を隙間から逃がす通気二重屋根だった。

「屋根を二枚にして、暑さが二倍になるのでは?」

院長は疑った。

サルハは隣り合う二室の片方だけを改修し、正午に扉を閉めた。両室へ同じ水差し、同じ蝋板、同じ温度計を置く。

一時間後、従来室は四十二度。蝋板は縁から曲がり、水はぬるい。

二重屋根の室は三十一度。蝋板は平らで、水差しの表面には朝の冷たさが残っていた。

午後、熱病患者二十人を移した。誰も廊下へ逃げず、医師は三時間連続で治療できた。冷却用の氷は一日十二箱から三箱へ減り、薬蝋の廃棄はゼロになった。

夕方、砂嵐が来ても上屋根が熱と砂を受け、下の防水屋根には傷一つ付かなかった。

市の医務官は温度記録を見て、氷商との年間契約を閉じた。

「学校七棟、兵舎五棟、孤児院二棟も夏に閉鎖している」

診療所は暑さのため正午から夕方まで閉まり、毎日三十人を門前で帰していた。改修室が使えるようになると、その三時間だけで熱病患者十七人へ薬を渡せた。院長は涼しい室内で初めて、手元を震わせず傷を縫った。

上の屋根に触れると火傷しそうな熱さだったが、下の屋根は掌を置ける。二枚の間からは熱風が絶えず抜け、布片を近づけると外へはためいた。魔法冷却器なら一室につき魔石を毎日五個使う。二重屋根は一度建てれば燃料ゼロで、十四棟分でも一年の魔石代より安い。医務官はその場で冷却器の追加購入を撤回した。

待合室の砂時計は止まらず、閉鎖時間だった三時間にも患者の列が途切れなかった。

彼は十四棟分の発注書をサルハへ差し出した。

「すべて二重屋根にせよ。砂都の公共建築主任として採用する」