幼年を焚く

礼拝堂の中央で、エルガスは氷の棺に横たわっていた。

まぶたの下は青く、息はない。胸だけが一時間に一度動き、そのたび氷の内側から死人の爪が増える。夜半まで温められなければ、彼は亡者の群れを連れて起きる。

棺の脇に、記憶を燃やす炉があった。

生きた者の幼年を薪にすれば、その温度を死にかけた者へ渡せる。一つ燃やすごとに、薪を出した者の身体はその記憶の年数だけ老いる。

トゥラは最初の木片を握った。七歳の夏、川で初めて泳いだ記憶。炉へ入れると青い火が上がり、エルガスの指先から氷が溶けた。

トゥラの髪に白いものが混じる。

次は九歳。母が焼いた固いパンを、焦げた側から食べた朝。火は甘い匂いを立て、棺の氷を腕まで退かせた。トゥラの背が少し曲がった。

十二歳の剣稽古。十五歳の家出。十七歳、初めて人を殺し、夜明けまで吐いた記憶。

燃やすたびエルガスの頬に血色が戻り、トゥラの手には皺と染みが増えた。思い出そうとしても、幼い自分がどんな声だったか、もう分からない。

氷は胸に一塊だけ残った。

炉が最後に求めたのは、最も温かな幼年の記憶だった。

トゥラには一つだけ残っている。十八歳の雪の日、路地で凍えていた同い年のエルガスへ外套を掛けた。厳密にはもう子どもではない。けれど二人が仲間になる前の、最後の幼い日だった。

木片へ移すと、エルガスの笑顔が浮かんだ。

「それを燃やせば、俺を知らなくなる」

棺の中から掠れた声がした。

トゥラは返事をせず、木片を炉へ落とした。

白い炎が上がり、氷はすべて水になった。エルガスが咳き込み、人の息を取り戻す。

彼を抱き起こしたのは、腰の曲がった白髪の老人だった。

「……誰だ」

エルガスが問う。

老人も同じ顔で首をかしげた。自分の名も、なぜここにいるのかも、若い男を救うために何を燃やしたのかも思い出せない。

炉の灰の中から、子ども二人の笑い声だけが一度響いた。

老人はそれを知らない誰かの幸福として聞き、皺だらけの頬に、理由のない涙を流した。