最弱職〈城壁〉の死刑
職業鑑定で〈城壁〉と表示された日から、パルミロは笑われ続けた。
動けず、攻撃できず、経験値も入らない最弱職。
それでも彼は北門で三年間、魔物の侵入を一度も許さなかった。功績を奪った騎士団長ドーガンは、真実を訴えた彼を反逆罪で処刑台へ送った。
北門の修繕費は毎月計上されたが、実際には釘一本使われていない。門が無傷だったのは、夜ごとパルミロがその前に立っていたからだ。
「最弱職にふさわしく、攻城兵器で終わらせてやる」
処刑台の正面に大型弩が据えられる。城門用の鉄矢が、両手を縛られたパルミロの胸へ向いた。
鑑定板には、彼の数値が表示されている。
《職業:城壁》
《攻撃力:1》
《防御力:9999》
観客は笑った。防御力の表示上限が九九九九で止まることを、多くは知らない。
鑑定官だけは知っていた。九九九九に達した者を一度も見たことがないため、説明書の注意書きを迷信だと思っていたのだ。彼は板の裏を返し、《上限到達時は上位鑑定を行うこと》の一文を確かめた。
「放て!」
鉄矢が唸り、胸へ命中した。
処刑台の後方にある壁が衝撃で崩れる。木片と砂埃が空へ舞った。
煙が薄れると、パルミロは同じ場所に立っていた。両手を前で縛られ、肩を少し落とした、連行されたときのままの姿勢だ。
鉄矢は先端から潰れ、足元に転がっている。
北門の衛兵たちが息を呑んだ。魔物の角が門前で同じ形に潰れていた夜を、彼らは何度も見ている。今になって、何へぶつかった跡だったのか理解した。
ドーガンは鑑定板を叩いた。
「九九九九程度で防げる威力ではない!」
「では、測り直しますか」
鑑定官が恐る恐る上位板を持ってくる。王城の結界を検査するための品だ。
団長はその結果を待たず、第二射を命じた。
今度は大型弩三基へ魔力を連結する。門だけでなく城塔まで貫く〈三城崩し〉。照準の赤線が、パルミロの心臓で重なった。
三本の鉄矢が一つの轟音になった。
処刑台が消え、土煙が広場を覆う。鑑定板は衝撃で何度も明滅した。
それでも煙の中心には、人影があった。
肩を落とし、両手を縛られたまま。
足の位置まで変わらない。
上位鑑定板が計算を続ける。五桁、六桁、七桁。表示枠が広がり、やがて数字そのものが消えた。
《対象は数値形式に対応していません》
《防御力:測定不能》