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《教育配信者カンナと図書館員で攻略?》
《物語喰いは行動を台本どおりに固定する》
《もう“二人は敗北した”って次頁に書かれてるぞ》
人気教養配信者・茅原カンナが、空中に浮く巨大な本を読み上げた。
「勇者は剣を落とし、司書は答えを失い――」
言葉どおり彼女の剣が床へ落ちる。同行する図書館員・東雲史緒の手からも索引カードが消えた。物語喰いは、本の向こうで羽根ペンを動かしている。
「史緒さん、読まなければ進まない?」
「いいえ。読者が黙っても、本は終わりへ進みます」
次の頁が勝手にめくれ、二人の敗北が大きな文字で現れた。
《記載された文は三秒後に現実化》
《破ると同じ頁が無限複製、燃やすと火刑の展開になる》
《図書館員、本を閉じに近づいたら“腕を失う”って追記された》
史緒は伸ばした腕を止めない。カンナが敗北の文をあえて最後まで読み上げ、物語喰いの視線を自分へ引きつけていた。司書に残されたのは三秒と、本を傷つけずに終わらせる職業上の意地だけ。彼は表紙ではなく最終頁の奥へ指を差し入れ、そして一度だけ、後ろ見返しを閉じた。
巨大な本が、終わりから閉じた。
これから書かれるはずだった頁がすべて表紙の外へ押し出され、白紙となって舞う。敗北の一文も現実になる前に綴じ込まれた。物語喰いだけが本の外へ取り残される。
カンナは拾った剣を羽根ペンへ当て、先端だけを折った。
「結末を変えたの?」
「本には読む順番があります。でも閉じる順番まで、最初からとは限りません」
《書誌構造検証、後ろ見返しを閉鎖した時点で“刊行済み”判定》
《カンナが台本を読み続けて時間を作り、史緒が物語の外から終了処理》
《教える人と守る人が、敗北の一文を未刊にした》
カンナは白紙を一枚拾い、史緒へペンを渡した。
「次回予告はあなたが書いて。私はその先を、生配信で証明する」
迷宮アーカイブの公式目録が更新された。
【禁書《二人の敗北》――刊行中止/回収者 茅原カンナ・東雲史緒】