火薬を抜いた銃

山砦の門前に、古い火縄銃が一挺置かれていた。

銃床には赤い糸が巻かれ、持ち主が百人隊長だったことを示している。だが隊長は昨日死に、砦はその後釜を浪人二人から選ぶことにした。

セルハト・デミルとトゥラン・バシュ。どちらも国境軍を脱走し、どちらも剣だけで冬を越してきた。セルハトは峠の宿を守り、トゥランは徴税隊を護衛した。昨日までなら顔を合わせても酒を分けた。だが砦の兵は百二十、指揮官の寝床には薪と温い粥がある。浪人の友情は、冬の終わりほど安くなる。トゥランは昨夜までセルハトへ勝ったら半分雇わせると約束した。砦主の前では、その話を一度もしなかった。

規則は一つ。籤で銃を得た者は一発だけ撃てる。その後は曲刀。立っていた方を雇う。砦主は明朝、谷底へ偽の降伏使を出す。新しい百人隊長は、敵が門前へ集まった瞬間に撃ってよいか判断する。空撃ち一つで慌てる男には任せられない役だった。試されること自体が、すでに罠だった。

セルハトが銃を引いた。

トゥランは笑った。銃を持つ手は塞がり、火をつける間に距離を詰められる。それでも弾が出れば、笑ったまま死ぬ。

セルハトは銃口を下げ、わずかに傾けた。火薬の粒が中で滑る音がしない。死んだ隊長の銃から、誰かが火薬を抜いている。砦主は二人のうち、空の銃を持っても慌てない男を見たいのだ。

開始の太鼓が鳴った。

セルハトは火縄を落とした。火皿が光り、白い煙だけが出る。

トゥランは待っていた。弾がないと見るや、曲刀を抜いて一直線に来た。

セルハトは銃を捨てなかった。

長い銃身を横へ出し、トゥランの曲刀を受ける。鉄と鉄が噛み、銃床を捻ると刃が外へ流れた。セルハトは一歩入り、赤糸の巻かれた銃床でトゥランの口を打った。

歯が一つ飛ぶ。

続けて腰の曲刀を抜き、切っ先を胸骨へ止めた。

「空だと知っていたな」

トゥランが血を吐いた。

「空だから使った」

「銃は撃つものだ」

「給金が出るなら、棍棒にもなる」

セルハトは火縄銃を立てて地へ置いた。赤い糸には、死んだ隊長の手垢が残っていた。

砦主が指を鳴らすと、山門の閂が外され、鉄扉が開いた。