百年の老いを穀倉で止める

穀倉番エルカナは、王都で最も古い鍵束を持っていた。

麦が湿らぬよう風を通し、鼠穴を塞ぎ、古い袋から先に出す。飢饉が来なければ仕事は不要とされ、豊作の年には「倉で眠るだけ」と給金を削られた。

彼の技能は、穀物を腐らせないためのものだった。

【時止め貯蔵:扉で囲った倉へ収穫物を納め、再び扉を開くまで時間の影響を受けさせない。倉の広さは問わない】

時喰いの神獣が王都へ向かった日、触れたものは一息で百年老いた。

森は枯れ、川は干上がり、石橋さえ砂になる。王は地下の小さな宝物庫へ逃げ込み、自分と金貨だけを貯蔵魔法で守れと命じた。市民二十万人を入れる倉はないと、宮廷魔術師は首を振った。

エルカナは城壁の四つの門を見た。

王都は壁と門で囲まれ、毎年、畑から得た麦も、村から来た若者も、税帳では《王国の収穫》として数えられている。人を数字にした制度を、今だけ人を守る意味へ使える。

彼は四門の鍵を一つの輪へ通し、最後の避難民が入ったのを確認した。

「今年の収穫、全て入庫」

四つの門を同時に閉じ、技能を使う。

王都全体が淡い琥珀色に包まれた。

時喰いの波が城壁へ到達する。外の草は灰になり、雲さえ古びて消えた。だが扉で囲まれた都の内側では、炎も呼吸も一瞬のまま保たれる。赤子の涙は頬を落ちず、倒れかけた杯も空中で止まった。

百年分の老いが通り過ぎる。

エルカナが鍵を回して門を開くと、王都には同じ朝の続きが戻った。城外の神獣は寿命を使い切り、白骨になって崩れている。

宝物庫だけに逃げた王は、王都という大倉の入庫名簿へ自分を書かなかった。扉を開けて出てきた時、抱えた金貨だけ新品のまま、王自身は百年老いていた。

保存されていた麦は、時の波で村を失った城外の避難民へ最初に配られた。王が金貨で若返りを買おうとしても、百年を戻せる者はいない。エルカナは宝物庫の鍵を取り上げ、その扉へ《共同備蓄庫》の札を掛けた。古い鍵束が、初めて全ての民のために鳴った。

《職業が【穀倉番】から【時蔵豊穣守】へ書き換わりました》