百年後の川を掘る
「百年後しか見えない鑑定士に、今日の鉱脈が分かるものか」
砂都の採掘長ネグラドはカドルを坑道から追放した。
【百年鑑定:非生物の対象が、ちょうど百年後にどうなっているかを一行で表示する】
金鉱を見ても『採掘済み』、道具を見ても『錆』。今どこを掘るべきかは分からず、役立たずとされた。
三日後、大地震で砂都の川が消えた。
井戸は干上がり、貯水槽は七日分。配給は一人一椀に減り、市場では金貨より水筒が高くなった。採掘隊が旧河床を掘っても、水は一滴も出ない。深く掘るほど熱い砂が崩れ、三人の坑夫が負傷した。砂漠女王シャムサラは都を捨てる決断を迫られた。だが十万人を連れて次の泉へ着くには、最低でも十二日かかる。
カドルは乾いた川底の石を一つ拾った。
――百年後:風化して砂となる。
少し東の石も砂。北も砂。だが、城壁の外に転がる黒い石だけは違った。
――百年後:丸く磨かれ、河床に沈む。
今は乾いて角張っている石が、百年後には水に削られている。
「未来の川が、この下を通ります」
採掘長は嘲った。
「百年待てというのか」
「いいえ。水はもう地下にあります。地上へ出るのに百年かかるだけです」
カドルは等間隔に石を選び、百年後の姿を鑑定した。砂になる地点と、丸くなる地点の境を杭でつなぐ。一本の曲線が、都の南から王宮の下へ延びた。水を求めて集まった民は、その何もない砂上の線を黙って見守った。今は見えなくても、百年後の石だけが同じ答えを繰り返している。
前世で地図を重ねたように、未来の河床を現在の砂上へ描いたのだ。
女王は自ら採掘隊へ命じた。
「杭の交わる場所を掘れ」
十歩。二十歩。岩盤に亀裂が入り、冷たい風が吹き上がる。次の一撃で地下河川が噴き出し、砂を押しのけて新しい泉となった。
民が水へ手を伸ばす中、採掘長は追放札を濡れた地面から拾おうとした。シャムサラはその札を泉へ流す。
「今日の役に立たぬ百年だったな」
女王はカドルへ、王家の測量杖を渡した。
「我らが明日を見失ったとき、そなたは百年後から道を引いた。砂都の未来は、今日よりおまえに掘らせる」