神の判決は偽でした

神殿の炎が青くなれば有罪。

そう信じられた神判で、フレナの兄は反逆者とされた。大司教が祈ると炎は青く染まり、翌朝には処刑される。

真偽鑑定士フレナは祭壇へ駆け上がった。

【真偽鑑定:意味を持つ宣言、記録、現象が、事実に一致するか判定する】

「神の奇跡を鑑定するなど不敬だ」

大司教が衛兵に命じる。フレナは押さえられながらも、兄ではなく、青い炎が示した「有罪」という判決そのものを対象にした。

判定は、偽。

その一字が神殿中の壁へ投影された。

群衆がざわめく。大司教は炎へ油を注ぎ、文字を消そうとした。

「悪魔の幻だ!」

フレナは叫ぶ。

「では、その言葉も判定します」

偽。

今度は祭壇の女神像が目を開いた。神判の法には、神の名で偽りを告げた司祭は、自ら偽証の炎を受けると刻まれている。

青い火が祭壇から離れ、大司教の袖へ移った。隠していた魔石が焼け落ちる。それは炎の色を変えるための細工だった。

さらに法衣の内側から、兄の印章を盗んで作った偽命令書が散らばる。大司教は反対派を消すため、神判を何度も操作していた。

衛兵はフレナの兄の鎖を外し、代わりに大司教を囲んだ。

「神は私を選んだ!」

最後の叫びにも、神殿全体が答える。

偽。

笑いと怒号が一緒に起こった。女神像はフレナへ天秤を差し出し、兄はその前で深く頭を下げた。

青い炎で家族を奪われた者たちは、過去の判決書を抱えて祭壇へ列を作った。フレナが判定するたび、偽の文字が次々に浮かび、地下牢の扉が開いていく。神殿騎士は大司教の命令ではなく、真実と判定された救出命令だけに従った。兄は自由になると、自分だけ帰ろうとせず最後の囚人まで鎖を外した。その姿に、群衆は反逆者ではなかったと改めて理解した。

女神像の青い炎はその日から廃され、神判には証拠と反論の時間を必ず設ける新しい法が刻まれた。

その鐘は、無罪となった者を迎えるため初めて鳴らされた。

天秤が一度だけ釣り合うと、彼女の職業欄から迷いの余地が消えた。

【職業:真偽鑑定士 → 絶対真偽審判官】