竜を落とした騎手を待つ空

竜騎手エシュクは、王都の空で竜を墜落させた。

着陸合図を一つ読み違え、相棒の青竜は訓練塔へ翼をぶつけた。竜も見物人も無事だったが、飛竜団はエシュクの騎手章を剥いだ。

「空で迷う者に手綱は渡せない」

療養中の青竜を見舞うと、竜舎の前に三人がいた。

国境飛行隊長ジャハナは、自分の飛行眼鏡をエシュクの首へ掛けた。

「山の風を読んでほしい。次の先導を任せる」

竜医キルシュは、診療台の隣に騎手用の丸椅子を置いた。

「治療飛行に付き合って。相棒の呼吸をあなたほど聞ける人はいない」

遊牧空艇の主ファラドは、丘の上で発進用の信号火を燃やしていた。

「竜に乗らない道もある。気球の籠は二人分空いている」

三人の勧誘を聞いた青竜が、嬉しそうに鼻を鳴らす。

ジャハナは墜落記録より、最後まで竜の頭を抱いて衝撃を受けたエシュクを見ていた。キルシュは療養中、一日も欠かさず翼を洗う手を知る。ファラドは飛べない竜も乗せられるよう、空艇の甲板を補強してきた。

だがエシュクが近づくと、竜は急に暴れ、鎖を切って飛び上がった。傷んだ翼では高度を保てず、再び塔へ向かって落ちていく。

エシュクは合図笛を吹いた。音が裏返り、竜はさらに旋回した。

「また落とす!」

彼は飛行眼鏡を外した。

「僕を誘わないでくれ。次は君たちまで墜ちる。皆、離れて!」

三人が別々の方向へ走る。置いていかれるのだと、胸の奥が冷えた。

次の瞬間、山側、竜舎、丘の上から三色の煙が上がった。

ジャハナは風向きを示し、キルシュは安全な着地点へ薬草の香りを焚き、ファラドは空艇を塔との間へ滑り込ませる。三人は逃げたのではなく、空を三方から囲んでいた。

エシュクは煙を読み、今度は笛を短く一度だけ鳴らす。

青竜は空艇の気流へ翼を預け、柔らかな草地へ降りた。

「迷ったら三つの目で見ればいい」とジャハナ。

「笛が裏返ったのは、あなたが竜より痛がっていたから」とキルシュ。

ファラドは信号火へ薪を足した。

「選ぶのは、飛べるようになってからでいい」

眼鏡、丸椅子、空艇の籠。空を失った騎手のために、三つの着陸場所が夜まで灯り続けた。