羊皮紙の穴

ブレンの祈祷文には、虫食いの穴が十三個あった。

『主よ、夜を歩く者を守りたまえ』。穴の位置を覚えているのはブレンだけではない。砦の院長は同じ文の写しを地図の上へ置き、十三番目の穴が開くのを待っている。羊皮紙一枚が欠ければ、渡河軍は川底へ沈む。ありふれた文句を古い羊皮紙へ写し、ところどころへ針を通した。味方の修道砦で軍用地図に重ねれば、十三の穴が敵の見張りを避ける浅瀬を示す。

針を刺すたび、ブレンは穴の名を口にした。浅瀬、柳、沈み石、折れた杭。十三個目だけは『帰り道』と呼んだ。誰が帰るかまでは決めなかった。

ブレンは戦場司祭の黒衣を着て、敵の野営地へ入った。首には木の十字架、手には祈祷文。それ以外は何も持たない。刃も銭もない男ほど、兵は中身を探したがる。

最初の哨所で、若い兵が文を声に出して読んだ。

「字が下手だ」

「神は達筆だけを救わぬ」

二つ目では、百人隊長が羊皮紙を灯へ透かした。穴から火が星のように見える。

「暗号か」

ブレンは肩をすくめた。

「虫に聞け」

隊長は穴を指で数えた。十三。帝国では忌み数だった。兵たちは触れるのを嫌がり、文を返した。

最後の幕舎には、敵の従軍司祭がいた。老僧は一読し、眉を上げた。

「この一節は旧訳だ。今の教会では『夜を歩く者』ではなく『迷う者』と書く」

ブレンは答えなかった。宗派の違いは、偽装より深く人を疑わせる。

老僧は羊皮紙の端を燭台へ近づけた。

「異端の文なら焼く」

火が角を舐める。最も外側の穴まで指二本分。そこが焼ければ浅瀬の入口を失う。

ブレンは祈りを始めた。敵の言葉ではなく、自分の故郷の古い発音で。老僧の顔が変わる。その祈りは、二十年前に廃された修道院のものだった。

「どこで覚えた」

「あなたと同じ場所で」

二人はかつて同じ修道院にいた。名を尋ねれば過去が戻る。老僧は火を消し、羊皮紙を返した。

「行け。次に会えば、どちらかが異端だ」

敵陣の外れまで、誰も止めなかった。

修道砦へ着くと、ブレンは祈祷文を軍用地図へ重ねた。十三の穴が川に沿って曲がり、敵陣の背後へ一本の道を作る。焼けた角は黒いが、入口の穴は残っていた。

院長は鐘楼を見上げた。

夜の川霧の中、渡河開始を告げる鐘が三度鳴った。