羽竜を包む焼きたての布
冬の朝、孤児院の屋根へ羽竜の幼子が落ちてきた。
雪解け水を吸った翼は開かず、煙突のそばで震えている。町の役人は、神獣を勝手に匿えば罰金だと言い、捕獲用の檻を運ばせた。
孤児のゼフは、屋根裏窓から幼竜を見た。
昨夜、自分の毛布を年下の子へ譲ったばかりなので、寒くて眠れない顔を知っていた。歯を見せていても、翼の先が震えるのは怒りではない。
怖いというより、寒そうだった。白い羽毛は濡れて細くなり、青い皮膚が透けている。火を吐くはずの喉から出るのは、白い息ばかりだ。
ゼフは裸足のまま厨房へ走った。自分たちの朝食用パンを包んでいた厚い布を、竈のそばで温める。院長は「役人に任せなさい」と止めたが、彼は首を振った。
「檻は、濡れた羽を乾かさないよ」
屋根へ出ると、幼竜は嘴のような口を開いて威嚇した。ゼフは追い詰めないよう近づかず、温かな布を瓦の上へ広げる。その端に自分が座り、残り半分を空けた。
風が吹く。
幼竜は震えながら一歩、また一歩と進み、布の上へ腹をつけた。ゼフは端をそっと折り返す。嫌がらないのを確かめて、濡れた翼を押さえず包み、上から手のひらで温めた。
しばらくすると、羽毛がふくらみ始めた。ゼフは濡れた布の面を外へ折り返し、温かなところだけが体へ当たるよう何度も包み直した。
一枚一枚が空気を含み、幼竜は白い綿菓子のように丸くなる。喉から、ぽう、と小さな火が出て、二人の間の布をさらに温めた。
役人が梯子を上りきった時、幼竜は元気よく翼を開いた。だが飛び去らず、ゼフの背へ片翼をかぶせる。
「その子を渡せ」と役人が言う。
幼竜は翼の内側で、ゼフの胸へ羽根形の契約印を灯した。
院長が役人の前へ立ち、初めてきっぱり告げる。
「この子は、うちの家族を選びました」
羽竜の翼は見た目より厚く、焼きたてのパン袋のような香ばしい熱を含んでいた。肩へ預けられた幼い体の重さに、ゼフはもう冬風で震えなかった。