茎のまわりに築く畑

北辺軍の馬鈴薯は、三袋に一袋が緑色だった。

 苦く、食べた兵が腹を壊す。軍需官は種芋が呪われていると言い、農民へ全量弁償を命じた。だが畑を見ると、雨で土が流れ、芋が半分地上へ顔を出していた。

 高棚佐和は、芽が伸びた株の根元へ土を寄せ始めた。

「埋めれば茎が腐る」

 軍需官ヴォルスは笑い、試験区画百株だけを許した。佐和は茎の下半分を隠すよう、両側から土を盛って高い山形にする。比較区画百株は平らなまま残した。

 十日後、大雨が来た。

 平畑では水が表土を削り、白い芋がいくつも露出した。土寄せ区画では盛土の肩が少し崩れただけで、芋は土の中に隠れている。佐和は崩れた分だけ、もう一度土を寄せた。

 収穫日、軍の検査官が二百株をすべて掘った。

 平畑は収量六百二十斤。そのうち緑化した芋が二百四十八斤、虫穴と日焼けを除くと可食部は三百十一斤だった。

 土寄せ区画は八百七十斤。緑色の芋は六斤だけで、可食部は八百十二斤。種も肥料も同じなのに、軍へ渡せる量は二・六倍だった。

 検査官が大きな芋を切る。平畑の緑芋は皮の下まで青く、舌へ苦味が残る。盛土の芋は淡い黄色で、蒸すとほくりと割れた。

 株当たりの個数も、平畑の平均六個に対し、土寄せ区画は九個だった。盛った土の中へ新しい地下茎が伸び、芋の居場所そのものが増えている。掘り手が籠を替える回数まで倍になった。

「土の中へ別の芋を隠したな」

 ヴォルスは区画の周囲を掘らせた。だが植付時に一本ずつ付けた番号札が、百株すべて根元に残っている。隠した余地はない。

 農民の弁償額は金貨九十枚。土寄せに必要な追加作業は一人一日。軍の書記は二つの数字を並べ、弁償命令を黒墨で塗り潰した。

 検査官は緑芋の袋を軍需官の足元へ置き、佐和へ北辺軍の農地章を渡した。

「来季の馬鈴薯三十町は、すべて土寄せで作る。指導契約と軍の全量買付を、今ここで結ぶ」

 農民たちの借用証は、盛り上げた畝の上で一枚ずつ破られた。