証言の順番
職場の女性四人で作った相談グループから、私は外された。
嫌がらせを告発する時、全員の証言を整えた私だけが裏切られた。最初は昼休みの愚痴を聞くだけだったのに、会社を変えるには四人が同じ方向を向く必要があると私が提案した。相談グループの名前も、規則も、私が決めた。
亜紀は、話すたび日付を間違える。私は会う前に台本を渡し、「三月十四日」「給湯室」「右肩」と三回復唱させた。語尾が弱い時は録音を送り直させ、泣く場所には赤い印をつけた。真実でも、順番が乱れれば信じてもらえない。
ところが再聴取の日、三人は台本を持ってこなかった。さらに亜紀は、私が決めた紺の服ではなく赤を着ていた。弱く見せるための助言まで無視している。三人とも別々の椅子に座り、私の隣だけ空けた。
会議室へ入ると、告発された男性と会社の調査担当がいた。机の中央には、私が三人へ配った証言比較表が置かれていた。違いが出るたび赤く直したせいで、最後には三人の文章が句読点まで同じになっている。
亜紀は震えながら、最初の証言を撤回した。
「私がされたことを、妙香が自分の話に変えました」
亜紀が別の職場で受けた被害を、私は聞いていた。彼女が眠れない夜に送ってきた音声を、私は日付ごとに書き起こした。今の上司にも似た癖があったから、同じことをしたに違いない。彼が私の誘いを断った翌日、匿名窓口へ名前を出した。三人には「思い出せないだけ」と説明し、亜紀の記憶に合う形で場面を練習させた。
調査で、当日の男性が出張中だったと分かった。出張記録だけでなく、私が三人へ「思い出したことにして」と送った下書きも復元された。亜紀は、その文面を読むたび吐き気がしたと言った。残る二人も、本当の不満を話すと「弱い」「会社が動かない」と退けられ、私の筋書きへ名前だけ貸したと認めた。
私は女性たちを守りたかっただけだ。曖昧な被害を、会社が動ける言葉にした。
三人は、私の告発で無関係な人が処分されかけたと責め、今後の相談から私を外した。亜紀は台本を破った。
帰宅後、別部署の匿名相談フォームを開いた。
最初の欄に、《三月十四日、給湯室で》と入力した。