誕生日は別の日
母から三者通話がかかってきた。
弥生が出ると、妹の澪里もすでにつながっている。
「今年の合同誕生日、十五日でいい?」
母は挨拶より先に言った。
弥生は十二日生まれ、澪里は十九日生まれ。子どものころから、間を取った十五日に一つのケーキで祝われた。
「今年は仕事で無理」
澪里が答える。
「また弥生に合わせられないの? お姉ちゃんは去年も休みを取ったのよ」
「去年は私が取れただけ」
弥生が言っても、母は続けた。
「澪里は自由よね。弥生は昔から家族を優先するのに」
去年、弥生は休暇を取ったのではなく、たまたま休日だった。母の中では、姉は譲る人、妹は譲らせる人になっている。
合同のケーキも、弥生には苺を譲れと言い、澪里には姉に感謝しろと言うための舞台だった。
「今年は合同にしない」
弥生は言った。
母が沈黙し、澪里も息を止めたのが分かった。
「姉妹なのに、一緒が嫌なの?」
「澪里が嫌なんじゃない。二人の誕生日を、どっちが合わせたか数えるのが嫌」
「ケーキを二つ買えってこと?」
「買わなくていい。私は十二日に自分で過ごす」
澪里が続ける。
「私は十九日。会いたくなったら別の日に会う」
母の声が尖る。
「家族がばらばらになるわ」
弥生は壁のカレンダーを見た。十二日と十九日の間には、六つの四角がある。そこを埋めなければ家族になれないわけではない。
「十五日は何もしない日にしよう」
「そんなの寂しいでしょう」
「私は寂しくない」
澪里が言った。
少し間を置き、「弥生は?」と尋ねる。
「私も」
母は「勝手にしなさい」と通話を切った。
三者通話の画面から一人消え、姉妹だけが残る。
澪里が小さく笑った。
「初めて、誕生日が一週間にならなかった」
「私は七日間ずっと譲る準備してた」
「私は七日間ずっと謝る準備」
二人は、それぞれの準備をやめる約束をした。
贈り物は欲しい物を本人に聞く。母から相手の予定を尋ねられても答えない。合同祝いは、二人が望んだ年だけ。
通話を終える前、澪里が言う。
「十二日は連絡していい?」
「午後なら」
「十九日は?」
「夜なら」
弥生はカレンダーの十五日についた母の赤い丸を消した。
十二日と十九日には、違う色で小さな点を一つずつ打った。