説明できない買い物

二十八歳の中条巴は、買ったものの理由を家計簿へ書いた。化粧水は必要経費、外食は交際費、花は友人への贈り物。自分のためだけに使う金には、学びや健康という名前をつけなければ落ち着かなかった。

昇給した月も、欲しかった指輪ではなく資格講座を申し込んだ。講座が嫌いなわけではない。ただ、役に立たないものを選ぶと、真面目に生きていない証拠を残す気がした。子どものころ、家計が苦しい時期に、祭りの飴を欲しがって母を困らせた記憶がある。母は買ってくれたのに、巴は帰宅するまで謝り続けた。それ以来、欲しいだけのものは、誰かを困らせるものだと思うようになった。今は自分の金でも、その許可だけが出せない。

休日の蚤の市で、牧原ダンがバンジョーを鳴らしていた。軽い弦の音に合わせ、古道具の店主たちが値札を揺らす。揃わない椅子、片方だけのイヤリング、用途の分からない金具まで、ここでは捨てられずに値段を持っていた。役目がなくても、誰かの目に留まるまで堂々と並んでいる。巴は通路の端で、青いガラス玉を見つけた。中に白い渦があり、光へかざすと小さな空のようだった。値段は百円。使い道はない。

牧原が演奏を止めずに声をかけた。

「説明できないものに、いくらまで払えますか」

「払う必要がないと思います」

「では財布でいちばん小さい硬貨を、役に立たないもの一つと交換してみて」

巴の財布には百円玉が一枚ある。ガラス玉と同じ値段だった。偶然まで仕組まれたようで腹が立ち、その場を離れた。食品売場で保存の利く豆を買い、帰り道にまた同じ露店の前を通る。

青い玉はまだ木箱の隅にあった。夕日を受け、白い渦がゆっくり動いて見えた。誰にも必要とされず、値下げもされていない。巴は家計簿の項目を考えた。装飾費、気分転換費、資料費。どれもしっくりこない。

店主が「何に使うの」と尋ねた。

巴は百円玉を木箱の上へ置いた。

「使い道はありません。きれいだから買います」

そう言って、理由のない青い玉を掌へ受け取った。