霞豹の仮面を外す舞踏会
仮面舞踏会の最中、霧が大広間を満たした。
白い霞から現れたのは、翼のような鬣を持つ灰色の豹だった。秘密を守る聖獣、霞豹。嘘つきを霧の中へ連れ去るとされ、貴族たちは互いを押しのけて壁際へ逃げた。
衣装係のレティは、豹の顔に銀の仮面がついているのを見た。
神殿が舞踏会の余興として連れてきた聖獣だ。演目では「選ばれた貴人」が仮面を外す予定だったはずだが、豹は頭を振り、前脚で顔を掻いている。
「選別を始めたぞ!」
「目を合わせるな!」
違う、とレティは思った。
仮面の縁から血が流れている。固定用の細い針金が頬毛と髭へ絡み、耳の下へ食い込んでいた。
レティは裁縫箱だけを持ち、霧の中へ入った。
霞豹の輪郭が消え、次の瞬間には背後で唸り声がする。彼女は振り向かず、床へ腰を下ろした。
「仮面は顔に合っていないと苦しいものよ。私もよく知ってる」
貴族の好みに合わせ、笑いたくないときも笑う。それも一つの仮面だった。
レティは自分の飾り仮面の紐を切り、床へ置く。すると霞豹が正面へ回り、鼻先で彼女の裁縫箱を押した。
まず鋏の先を布で包み、皮膚へ当たらないようにする。仮面と毛の間へ指を入れ、針金を一本ずつ切った。
絡んだ髭は抜かず、細い編み針で輪を広げて外す。最後の金具を取ると、仮面の下から擦り傷だらけの顔が現れた。
「綺麗な顔を隠すためじゃなく、言うことを聞かせるための仮面だったのね」
レティは香水のない水で傷を洗い、化粧用の柔らかな刷毛で薬粉を載せた。
霞豹は目を閉じる。霧が薄れ、床には神官たちが隠していた命令札と鞭が露わになった。
主催公爵が声を張る。
「余興は続けろ! その獣を壇上へ戻せ!」
霞豹は彼を一瞥し、レティの前でゆっくり仰向けになった。無防備な腹に銀の渦が現れ、彼女の頬へ同じ契約印が灯る。
笑顔を作らなくても、誰も責めることはできなかった。
レティが腹毛へ手を入れると、霧のように淡い毛が指の間でほどけた。豹は長い前脚を彼女の腿へ載せ、喉を鳴らす。優雅な見た目に反してその脚はずっしり重く、奥に宿る温度だけが、偽りのない親愛として伝わってきた。