ひとり帰還を迎える灯

トービスは、迷宮から一人で戻った。

出発したときは四人だった。

それ以上を、彼は宿《灯守り》の主人ユエンに話さなかった。ただ、一人部屋の鍵を受け取っても扉の前から動けずにいた。

「明かりを消さないでくれ」

「消しません」

「廊下も」

「朝まで点けます」

「部屋に入ったら、誰もいないんだな」

最後の問いだけが、ひどく小さかった。

ユエンは鍵と一緒に、丸い硝子灯を渡した。

「今夜の商品は《帰還灯》です。部屋へ戻るたび、あなたが帰ったことを一度だけ数えます」

部屋は本当に一人用だった。寝台一つ、椅子一つ。トービスが敷居をまたぐと、硝子灯の芯が橙に灯り、鈴より低い音を一つ鳴らした。

誰かの声ではない。慰めも言わない。ただ、帰還者が一人いると数えた音だった。

トービスは荷を置き、すぐ廊下へ出た。もう一度入る。

灯がともる。

三度、四度。部屋を出ては戻った。迷宮では、曲がり角のたび後ろを数え、いつから三人、二人、一人になったかを確かめ続けた。だがこの灯は、失った人数を数えない。今ここへ戻った一人だけを数える。

四度目には、扉の外へ三人分の返事を待つ癖が出た。静かな廊下に胸が縮んだが、室内の橙は消えなかった。先に戻った者を置き去りにせず、彼が自分で戻るまで待っていた。

五度目、トービスは扉を閉めた。

「帰った」

自分で言うと、灯が静かに揺れた。

その夜、彼は剣を抱かずに眠った。夢の中で仲間を探して走ることもなかった。朝まで橙の光が、寝台にある一つの影を見失わなかった。その一つを、足りない数ではなく、帰ってきた数として守った。

翌朝、トービスは銀貨一枚を置いた。さらにもう一枚、鍵の上に重ねる。

「今夜も戻ってきていいか」

「鍵は同じものを用意します」

「違う。灯に、また数えてもらいたい」

ユエンがうなずくと、彼は初めて入口をまっすぐ見て外へ出た。

帰還灯は朝日を受けて消えたが、硝子には温度が残っていた。

その温度を掌で確かめた瞬間、玄関のベルが鳴った。宿は次の帰還者を、一人として数え始めた。