光を飲む茶色い瓶

高級美容液《星涙》は、店頭へ並ぶ前に茶色くなった。

作りたては透明で花の香りがするのに、玻璃棚で三日照らされると鉄臭く濁る。香料師は保存薬を増やしたが、今度は肌に残る匂いが強くなり、予約千本がキャンセル寸前だった。

瓶洗いのサヴィルは、前世で化粧品包装を研究していた。彼は中身へ何も加えず、透明瓶を茶色い玻璃瓶へ替えた。

「腐りかけを隠す色だ」

店主は怒った。サヴィルは同じ釜の美容液を透明瓶と茶色瓶へ十本ずつ詰め、南窓へ三日置いた。箱にも入れず、日ごとに一度だけ色見本の白紙へ滴を落とした。

三日目、透明瓶の滴は紙の上で薄茶色になり、金属の匂いを放った。茶色瓶の滴は初日の透明な輪と重なり、花の香りも変わらない。量り、温度、栓はすべて同じ。違うのは光を通す瓶かどうかだけだった。

店主は客が中身を見られないと不満を言う。サヴィルは瓶の側面へ細い残量窓を一本だけ残し、普段は外箱の内側へ向けるよう印を付けた。客は量を確認でき、棚では光が当たらない。

予約客の代表が、二本を手の甲へ一滴ずつ塗った。透明瓶側には酸化した匂いが残り、茶色瓶側は数息で香りが薄くなった。客は迷わず茶色瓶を選ぶ。

さらに店頭灯の真下へ置く加速試験では、透明瓶が一日で変色したのに対し、茶色瓶は七日後も色見本と同じだった。廃棄予定だった九百本分の美容液は、詰め替えるだけで納品できる。

香料師が自分の保存薬のおかげだと言った。サヴィルは保存薬を入れていない試験記録を掲げた。

予約客千人へ瓶変更の知らせを送ると、キャンセルは一件も出なかった。それどころか《光を防ぐ瓶》という説明札を見た薬師組合から、追加で二千本の問い合わせが届く。透明さを高級の証と思っていた店主は、茶色瓶の前にできた列を見て黙った。

店主は透明瓶千本の発注を止め、茶色瓶の契約へ商会印を押した。廃棄倉庫の鍵をサヴィルへ渡し、九百本を今日中に救えと頭を下げる。

「星涙一万本。包装設計主任はサヴィルとする」