冬の窓際は罰ゲーム
十二月の席替えで、窓際の最後列を引いた。
春なら当たり、夏なら風が入る特等席。冬は違った。窓の隙間から冷気が入り、足元だけ別の季節だった。
隣になった彼女は、くじを見た瞬間に「罰ゲーム」と言った。
「人気席じゃないの」
「座れば分かる」
一時間目が終わるころには分かった。指が冷え、ノートを取る字が震える。窓に近い彼女はもっと寒いはずなのに、平然としていた。
「慣れてる?」
「去年もここ」
彼女は鞄から使い捨てカイロを二つ出し、一つを僕へ投げた。
「窓際税」
僕は受け取り、ポケットへ入れた。
翌日、僕もカイロを持ってきた。彼女へ渡そうとすると、すでに両手に一つずつ持っていた。
「準備いいな」
「学習した」
余ったカイロは机の間に置いた。必要なほうが使う共同財産になった。
授業中、彼女はよく指先をこすった。僕がカイロを寄せると、彼女もこちらへ押し返す。机の中央を行ったり来たりする小さな暖房だった。
ある朝、雪が降った。
教室中が窓へ集まり、僕らの席の周りだけ混雑した。彼女は人混みを避け、廊下へ出ようとした。
「ここ、特等席でしょ」
僕は椅子を少し引き、窓の前を空けた。
二人で座ったまま雪を見た。校庭の白線が消え、いつもの景色が静かになった。
「寒い」
彼女が初めて弱音を吐いた。
共同のカイロはもう冷たかった。僕は自分のポケットから新しい一つを出した。
「準備いいね」
「学習した」
渡そうとすると、彼女は受け取らず、机の中央に置いた。その上へ手を重ねる。僕も反対側から手を置いた。直接触れてはいない。薄い袋一枚をはさんで、同じ熱を待った。
昼には雪がやんだ。窓際の床は結露で濡れ、僕らは雑巾を持って拭いた。
「次の席、どこがいい?」
彼女が聞いた。
「暖房の前」
「私はまたここ」
「罰ゲームなのに?」
彼女は窓の外を見た。
「共同なら、そんなに悪くない」
次の席替えは春だった。僕らは離れ、窓際には別の二人が座った。
暖かくなっても、僕の筆箱には使わなかったカイロが一つ残っていた。
冬の席の記憶は冷たいのに、握ると今でも少し温かい。