処刑台は撮影用です
仮装イベントの控室で、参加者たちはスタッフの会話を聞いた。
「背の低い人から順に首を合わせて」
「処刑台は三番ブースです」
「笑っていると不自然だから、恐怖の顔で」
参加者六人は鏡の前で固まった。
会場のテーマは〈王宮デスゲーム〉。まさか仮装だけでなく、本当に処刑まで演出するのか。
最も背の低い女性が言った。
「私が最初?」
長身の男性が答える。
「身長順なら」
「なぜ背の低い人から」
「装置の調整が簡単だから?」
「知ってるような口ぶり」
「推理しただけ」
「処刑方法を推理できる人が一番怪しい」
六人はスタッフへ質問した。
「首を合わせるとは?」
「穴の中央に」
「穴?」
「顔がきれいに出る位置です」
「顔だけ残すの?」
「はい。身体は見えません」
参加者たちは一歩下がった。
「刃は?」
「上から落ちます」
「本物?」
「見た目はかなり」
「安全確認は?」
「毎朝しています」
「毎朝処刑を?」
疑いは、イベント主催者が秘密結社ではないかという話まで発展した。
「参加費が安すぎた」
「人数を集めるため」
「衣装貸出無料」
「最後の服になるから返却を気にしない」
「更衣室の出口が一つ」
「どの会場もそうです」
女性は仲間へ言った。
「私が行って、危険なら合図する」
「どんな合図?」
「叫ぶ」
「本当に処刑された時と区別がつかない」
「では笑う」
「恐怖の顔を要求されてる」
「ルールがよくできている!」
スタッフに呼ばれ、六人は三番ブースへ向かった。
そこにあったのは、巨大なギロチン型の顔出しパネルだった。首の位置を身長に合わせて調整し、発泡素材の刃を落として写真を撮る。
スタッフが説明する。
「背の低い方から撮ると、台を少しずつ上げるだけで済むんです」
最初の女性が穴から顔を出した。
刃が落ち、カメラが光る。
彼女は誰より自然な恐怖の顔で写っていた。
撮影後、スタッフは写真を見せた。
「今季最高の表情です」
女性は仲間を指した。
「この人たちが本気で怖がらせました」
六人全員に、演技賞のシールが貼られた。
処刑台は偽物だったが、疑心暗鬼だけは無加工だった。