剥がされた依頼書
青鐘ギルドの依頼板には、ディオンが剥がした跡が多かった。
報酬の高い護衛、簡単すぎる採取、署名のない討伐。彼は紙の匂いを嗅ぎ、蝋印を透かし、怪しい依頼を受付へ戻した。冒険者からは稼ぎを邪魔する男と呼ばれ、貢献度は一%だった。
依頼管理者モアドは、人気投票の結果を掲げた。
「依頼を減らす審査員など不要だ。数字を見ろ」
ディオンは剥がした依頼書の写しを箱へ入れ、机を明け渡した。
新しい依頼板は豪華な紙で埋まった。高額報酬に沸いた冒険者たちは、我先にと街を出る。
夕刻、救難の魔石が続けて光った。護衛先に商人はおらず、採取地には盗賊が待ち、討伐対象は最初から存在しない。依頼はすべて、ギルドの主力を外へ誘い出す罠だった。
空になった本部へ、武装集団が入ってくる。先頭の男はモアドと握手し、金袋を渡した。依頼審査をなくす代わりに、倉庫を明け渡す取引だった。
その場へディオンが戻った。箱を忘れたふりをしていたが、中には剥がした依頼書の写しと、同じ紙を買った者の記録が入っていた。
「どの依頼も紙の繊維が同じです。蝋印も本物から削った型。あなたが受付倉庫で作らせた」
モアドは剣を抜こうとした。だがディオンが壁の鐘を鳴らすと、外へ誘い出された冒険者たちが戻ってきた。彼は出発前、怪しい依頼を受けた者へ密かに合図を渡していたのだ。
囲まれたモアドは叫んだ。
「貢献度の低い部外者の証言だぞ!」
依頼板の審査核が写しを読み、剥がされた紙と守られた損失を照合した。貼らなかった依頼こそ、最も大きな仕事だった。
戻った冒険者たちは、受け取った偽依頼を依頼板の下へ積んだ。高い報酬に目を奪われた自分たちも悪かったと認め、ディオンが剥がしていた紙の意味を知る。彼は責めず、依頼人を確認する手順を教えた。
新しい審査規程では、役職者の紹介でも身元確認を省けない。審査を妨害した者の記録も公開される。
モアドが管理者だった頃の印章を示すと、依頼板はそれを無効と判定し、彼自身を審査待ちの列へ移した。
《依頼安全・真正査定》
旧評価 一% → 真値 九十六%
総合貢献順位 首位:ディオン
役職更新 依頼審査員 → 依頼審査最高権限
旧管理者モアド → 依頼提出者