十年保証のテーブル

家具店の閉店まで、あと十八分だった。

国枝千景は、戸谷広夢が選んだ折り畳みテーブルの値札を見た。二人で暮らし始める部屋には小さすぎる。向かい合えば膝がぶつかり、鍋を置けば取り皿の場所もない。

「これでいいの?」

「千景が、長く使わない物でいいって言ったから」

同居を提案したのは広夢だった。新居の床には、二人が今まで使っていた小さな家具を寄せ集めた配置図があり、中央だけが不自然に空いていた。千景は了承したが、家具は安い物、食器は一人分ずつ、家電はどちらかの所有にすると決めた。別れるとき困らないように、共有物を作りたくなかった。夕食も別々の皿へ盛り、調味料にまで小さな名前シールを貼ろうとして、広夢に止められたことがある。

幼い頃、両親の離婚でいちばん長く揉めたのは、家でも貯金でもなく、食卓だった。父は自分が買ったと言い、母は毎日使ったと言った。千景はそのテーブルの下で、家族だった時間が金額と所有権へ分解されるのを聞いた。それ以来、長持ちする物ほど、別れたあとの争いを育てる気がした。

「長く使わないんだから、これで十分」

「分かった」

広夢は反論せず、折り畳みテーブルの在庫票を取った。その素直さに、千景は胸を刺された。彼が見ている未来まで、自分の恐怖に合わせて短くしている。

店員が「配送受付は十五分で終了します」と知らせる。通路の奥には、無垢材の四人用テーブルがあった。十年保証。二人には大きく、値段も三倍する。広夢が以前、いつか友人を呼んで食事をしたいと言っていた物だ。

「別れたら、どう分ける?」

千景が聞く。

「そのとき話す。今から別れ方だけで選びたくない」

答えは保証ではなかった。だからこそ、信じられた。

千景は折り畳みテーブルの在庫票を戻し、無垢材の展示品へ手を置いた。

「長く使わない、じゃなくて、長く使いたい」

配送申込書の宛名に、二人の名前を並べた。十年保証の欄へ丸をつけ、最初の傷がついても返品しないことにした。