四日分の椅子

国府晶の評価面談では、会議室の椅子が五脚並んでいた。

ウェブ制作会社へ入って一年。片頭痛の治療で週四日勤務を選んでから、評価表の〈チームへの可視性〉が下がった。休みの日に連絡へ返さないことも、夕方の会議を避けることも、成果ではなく不在として記録されている。

「仕事はできている。でも、リーダーになるなら五日ここにいる姿を見せないと」

上司は空いた一脚を指した。晶には、自治体の申請サイトを担当する昇格案と、週五日勤務へ戻す条件が出されていた。

その日の午前、晶は申請状況の画面を差し戻していた。完了は緑、要修正は赤。文字はどちらも〈受付済み〉で、色だけが違う。公開日は翌朝で、後輩は仕様変更を恐れ、見た目だけ整えて納品しようとしていた。色の見分けにくい利用者には、自分が何を直すべきか分からない。

後輩デザイナーは仕様書どおりだと説明した。晶は責めず、画面を白黒にして見せた。二つは同じ灰色になる。さらに読み上げ機能では、どちらも同じ〈受付済み〉としか読まれない。晶は問題を説明するだけでなく、その場で文言と印を直した。完了にはチェック、要修正には鉛筆の印と具体的な文言を加え、今後は色を消しても意味が残るか確認する手順を共有した。

「そこまで見る力があるから、常勤なら任せたいんだ」

晶は、五日分の椅子に座ることと、五日分の成果を出すことは同じではないと思った。休みを削れば発作が増え、結局、判断できる時間が減る。以前、無理に五日働いた週には光が刺さるように痛み、翌日のレビューで一つの誤字さえ見つけられなかった。

彼女は昇格案を断らず、勤務条件だけ差し替えた。週四日、在宅二日。代わりに全案件のアクセシビリティ確認を担当し、判断記録を共有する。会議へ出ない日も、手順が残る形にした。

上司がすぐには返事をしないままでも、晶は申請を引っ込めなかった。

五脚目を空席のまま、働かない日の境界として残して、四日勤務のリーダー案を提出した。