四本脚の食卓

ダリオの廃屋には、立派な食卓があった。

ただし、脚が三本しかなかった。

残った三本も長さが微妙に違い、鍋を置けば傾く。床に座って食べれば済む話だが、ダリオはその食卓を直すことにした。

侯爵家の三男だった彼は、家族の席へ座った記憶がほとんどない。長男は父の右、次男は左。ダリオの椅子は「客が多いから」といつも壁へ下げられた。役に立たない三男へ与えられたのが、国境の荒地とこの廃屋だった。

だから最初の日に欲しかったのは、広い畑でも、立派な寝台でもない。

自分の椀を置いても揺れない場所だった。

食卓の裏には、何代もの住人が付けた焦げ跡や子どもの落書きが残っていた。捨てられた家具ではなく、誰かの食事を支え続けた道具なのだと分かった。

失われた脚と同じ木はない。ダリオは庭の梨の古枝を一本切り、樹皮を剥いだ。曲がっているため、まっすぐな脚にはならない。けれど木目を見て削る向きを変えれば、荷重を支える形にできる。

残る三本の高さを測り、床の傾きも確かめる。新しい脚だけを同じ長さにすれば、かえって揺れる。ダリオは何度も食卓を起こし、水を入れた椀を中央へ置いた。

水面が傾かなくなるまで、梨の脚を一削りずつ短くする。

最後に楔を打つと、食卓は四本の脚で立った。掌で押しても、びくともしない。

ダリオは一脚だけ残っていた椅子を正面へ置いた。どちらが上座かは知らない。座った場所が今日の主の席だ。

小鍋では、茸と麦のリゾットが煮えていた。木匙で混ぜると、乳酪が糸を引き、土の匂いに似た茸の香りが立つ。

侯爵家の紋章を付けた騎士が、相続書類を持って来た。

「ご長兄と次兄が決闘で負傷しました。あなたが戻れば、次期当主の席を――」

ダリオは書類を受け取り、空いている椅子がないことに気づいた。

「席なら、もうある」

封は切らず、壁の棚へ置く。食卓の中央へ鍋を置いても、水面も匙も揺れなかった。

家族に空けてもらえなかった一席を、ダリオは自分の手で作った。

彼は誰の許可も待たず、最初の一口をすくった。