天井の二十七枚
放課後の理科準備室で、私たちは蓄光シールを天井へ貼った。
文化祭の余りだった。星形が二十七枚、丸が十三枚。捨てる前に好きに使っていいと先生が言った。
椅子の上へ立ち、適当に貼る。
北斗七星を作ろうとしたが、星の数が合わない。オリオン座は位置がわからない。スマートフォンで調べれば済むのに、どちらも出さなかった。
「これは何座?」
天井の端に貼った三枚を指して、彼が訊く。
「遅刻座」
「何で」
「一時間目、二時間目、三時間目。だんだん入口に近づく」
「反省がない」
彼は四枚を曲線に並べた。
「購買パン座」
「どのへんが」
「列」
「短すぎ」
「人気ない日の列」
正式な星座は一つもできなかった。
『実験失敗座』『消しゴム落下座』『先生に見つかる三秒前座』。放課後の出来事ばかりが天井へ増えていく。
最後の一枚だけ、貼る場所が決まらなかった。
彼は春から別の学校へ通う。家の事情で転校するらしい。送別会では笑っていたし、連絡先も知っている。けれどこの準備室へ一緒に来る日は、あとわずかだった。
「それ、真ん中に貼れば」
彼が言う。
「何座?」
「まだ決まってない座」
「名前、雑」
「あとでつながる星が来るかもしれない」
私は椅子を部屋の中央へ運び、一枚を貼った。
周りに何もない、孤立した星。
電気を消す。
緑色の光が天井に浮かんだ。
本物の星空よりずっと低い。手を伸ばせば届きそうで、実際、椅子に乗れば剥がせる。
二人で床へ寝転んだ。
「転校先でも星貼る?」
「天井、怒られる」
「ここも怒られる」
「卒業までばれなきゃいい」
「来月いないくせに」
「写真送って」
下校時刻になり、電気をつけると星は消えた。
数分後、また消すと同じ場所に戻った。
春になって彼がいなくなったあと、私は孤立した一枚の隣へ新しい星を貼った。後輩がまた一枚、先生が気づかないふりで一枚。
正式な名前は最後までつかなかった。
星座にならない星は、離れたままでも、あとから伸びてきた線を受け取れる。
あの放課後、私たちが天井へ残したのは別れではなく、まだ決まっていない続きだった。