学院食堂の特別席

王立学院の食堂で、生徒会長アーヴェルはユノアの配膳盆を床へ払い落とした。

「奨学生が貴族席へ近づくな」

 今日のユノアは授業料免除の代わりに食堂を手伝っていた。スープが靴へかかっても、会長は謝らない。

「それから無料券を五十枚出せ。生徒会の接待に使う」

「一人一日一枚です」

「私が規則だ。断れば、食材を盗んだことにして退学させる」

 アーヴェルは食堂端末を奪い、ユノアの職員番号で無料券を発行しようとした。

「認証できません」

「なら、お前が操作しろ」

「指示確認書へご署名ください」

 ユノアが紙を出すと、彼は〈生徒会長権限により、無料券五十枚を会長本人へ交付〉と書き、金の校章印を押した。

「これで責任はお前に移った」

 ユノアは確認書を端末へ読み込ませた。

 食堂の壁面に、会長の利用履歴が映る。

 無料券は今月だけで三百枚。使用者はすべて別人だが、交換先の売店口座はアーヴェル名義だった。彼は奨学生用の食事券を取り上げ、街で転売していた。

「表示を消せ!」

 アーヴェルが命じる。端末はその声も記録した。

『監査記録を削除しますか』

「そうだ。私の不正が見つかる前に全部消せ」

『音声承認を保存しました』

 食堂中が静まった。

「端末が私を陥れた!」

「今の命令は、生徒会長印と結びついています」

 ユノアは床の盆を拾った。会長が割った器にも備品番号があり、彼の校章印で損害申告が自動作成されている。

 アーヴェルは貴族席へ向き直った。

「お前たち、何を見ている。父に言えば家ごと――」

 二階席から学院長が降りてきた。今日は食堂補助金の抜き打ち監査日だった。厨房では新しい器にスープが注がれ、奨学生たちの盆へ順番に戻されていく。

「君の父上にも、今の記録を送った」

「学院長、奨学生の証言を信じるのですか」

「君自身の署名と声を信じる」

 学院長は金の校章印を回収し、退学通知を開いた。

「アーヴェルを生徒会長職から罷免し、公金横領および脅迫を理由に本日付で退学処分とする」