封印番号四一七
竹越冬佳の答案封筒だけ、封印番号が四一七だった。
本来、第三試験室へ配られた封筒は四〇一から四一六まで。四一七は予備室用だった。
それでも答案から持ち込みメモが出ると、試験委員の浅羽根颯希は冬佳を失格にしようとした。
「封筒番号など事務上の誤差です。答案に紙が挟まっていた事実は変わりません」
冬佳は、受験前に封印番号を手帳へ書いていた。大学推薦を決める大切な試験だったため、配布時の説明どおり確認したのだ。彼女が提出した封筒は四〇九。それが採点室で四一七へ変わっている。
浅羽根は、冬佳の記憶違いだと言った。
試験本部は、封筒管理室の監視映像を確認した。答案回収後、浅羽根が四〇九を棚から取り出し、予備の四一七と交換している。四一七には、事前に作った偽の答案とメモが入っていた。
浅羽根の教え子で、冬佳と推薦を争う生徒も管理室へ入っていた。カメラの死角で待っていたつもりだったが、金属棚の扉に姿が映り込んでいる。
「封印は破っていません」
浅羽根は最後まで言い張った。
本部職員が番号台帳を開く。封印シールには、剥がすと下に別の文字が浮く加工がある。番号台帳の受領署名も浅羽根本人の筆跡で、事務上の誤差という説明は崩れた。四一七のシールには〈開封済〉の文字が現れ、粘着面から浅羽根の指紋が検出された。
本物の四〇九は、管理室の廃棄箱の底から見つかった。未開封だった。中の冬佳の答案には持ち込みメモなどなく、採点結果は九十六点。推薦基準を首位で超えている。
浅羽根の教え子は、先生から「冬佳を落とせば推薦できる」と言われたと認めた。試験委員長は浅羽根を職務停止にし、教え子の推薦審査も中止した。
冬佳の本物の封筒は、委員全員の前でもう一度封印された。新しい番号は五〇一。再調査資料の最初の一件という意味だった。
推薦名簿へ竹越冬佳の名が正式登録される。
封印番号四一七が証拠棚へ移された瞬間、偽物を守るための封は、仕掛けた二人の進路だけを閉ざした。