帰還投票の反対者

連城カリンへ、ギルド員たちの剣が向けられた。

《一斉帰還投票》

在籍者全員の賛成で、現実世界への切断を実行します。

反対者の理由は非公開。

三十七回の投票で、反対はいつも一票。記名式に切り替えた今、反対者がカリンだと判明した。

「三年も帰還を邪魔した裏切り者!」

団長が叫ぶ。カリンは否定しない。

「今はまだ、押せない」

理由を言えば信じてもらえるはずだが、システムが非公開にしている。発言欄で説明しようとすると、音声が消える。投票理由に関する言葉は外部医療情報として封じられていた。

団長は彼女を除名し、十九人だけで全員一致を作ろうとする。除名確認には警告が出た。

《当該メンバーは外部接続の安全確認者です》

《除名すると帰還機能を永久停止します》

それでも団長は剣を振り上げる。

カリンは自分から投票盤へ手を置いた。反対理由の封印解除を選ぶ。個人情報が全員へ公開される代わりに。

現実側の映像が空へ映る。十九人の身体は医療カプセルで安定している。団長だけ、切断すれば心停止する状態だった。カリンは現実では救命技師で、彼の補助装置が完成するまで反対票を入れ続けていた。

「俺のために、皆を閉じ込めたのか」

「あなたを置いて帰る投票に、賛成できなかった」

ちょうど外部から安全確認が届く。団長の表示が赤から青へ変わった。

カリンは三十八回目で初めて賛成を押す。

《賛成:二十/二十》

《全員の安全切断を確認》

外部映像には、カリン自身の身体も映っていた。三年間、彼女は救命技師であると同時に患者だった。反対票を入れるたび、自分の帰還も先延ばしにしていた。

団長は剣を下ろし、「なぜ俺だけに言わなかった」と問う。

「安全確認前に知れば、あなたは自分を除名しろと言ったでしょう」

彼は否定できない。

三十八回目の投票では、全員が理由を知ったうえで賛成した。全員一致は、反対者を消して作る同じ答えではない。反対の理由を持ったまま、条件が変わるのを待って選び直した二十の答えだった。

《反対票の意味を公開――帰還を妨害した一票ではなく、誰か一人を死亡扱いにして成立する全員一致を拒んだ一票》