折れない鎧へ傷を鍛える

《武器評論家ヤエの相方が町工場の鍛冶師?》

《不壊騎士は神剣十二本でも無傷》

《試作品の宣伝に伝説級を使うな》

人気武器評論配信者・八雲冴の十二本目の神剣が、不壊騎士の胸で折れた。彼女は折れた刃を投げ捨てず、共同攻略者の丹羽焔へ差し出す。

「評価は最低。切れ味以前に、対象が壊れない」

「では、壊れる場所を作ります」

焔が持つのは小さな金槌だけ。不壊騎士は傷一つない鎧を鳴らし、巨大な斧を振り上げた。

《鎧は破損概念そのものを拒絶》

《鍛造スキルは金属を強くするだけ、弱体化には使えない》

《冴、折れた剣でまだ受ける気か》

冴は半分の刃で斧を受け、火花を散らす。十二本を失っても、彼女は最後の一本を欠陥品として捨てなかった。折れ方、響き、刃に残る熱まで、評論家としてすべて焔へ見せるためだ。鎧の鏡面に折損した刃が映り、二つの金属が同じ音で震える。焔はその一瞬を狙い、折れた剣の峰を一度だけ金槌で叩いた。

澄んだ鍛造音が響く。

不壊騎士の胸へ、細い亀裂が生まれた。騎士は初めて自分の胸へ手を当て、理解できないものを見るように首を傾げる。十二本の神剣を砕いた腕が、わずかに後ろへ下がった。焔が鍛えたのは剣ではない。刃に映り込んだ鎧の像へ「折れた」という性質を打ち込んだのだ。

冴は笑い、亀裂へ折れた切っ先を差し込む。鎧は真二つに割れ、中から小さな光核が降参の旗を上げた。

「試作品ですらない剣で、最高評価を取るなんて」

「あなたが折れても手放さなかったから、鎧を映す鏡として残りました」

《金属共鳴解析、鎧本体へ破損履歴が転写》

《冴が折れた武器を使い切り、焔が敗北の証拠を勝ち筋に鍛えた》

《神剣十二本より、町工場の一打が上》

冴は折れた剣へ最高評価の札を結び、焔の金槌と並べて映した。

「次のレビューは共同制作で。私が壊し、あなたが価値に変える」

公式装備データベースの評価欄が更新された。

【不壊騎士攻略推奨装備:折損剣+丹羽式共鳴鍛造/再現性確認済み】