棚卸しの幽霊

午前零時、雑貨倉庫の棚卸しで、存在しない在庫が四十八個現れた。

壬生千紗がロケーション七―四を数えると、棚は空だった。端末は卓上加湿器四十八個を表示している。ゼロに修正しても、五分後にはまた四十八へ戻る。

「幽霊在庫だな。朝のシステム担当に回そう」

主任は笑ったが、その四十八個には、午前三時出発の注文が引き当てられていた。放置すれば、作業者は空の棚を何度も探すことになる。それだけでなく、あると思って受けた注文が、出荷直前に欠品へ変わる。

千紗は端末の更新時刻を並べた。毎時ちょうどではなく、修正してから必ず五分後。誰かが手入力しているのではない。別の処理が、ゼロを見つけて補充している。

彼女は隣の七―五を確認した。そこには加湿器が九十六個、二パレットある。本来、七―四が減ると七―五から四十八個を補充する設定だった。だが昨週の棚替えで、七―四は廃止され、商品は七―五へまとめられている。自動補充だけが古い場所を向いたままだった。

実物が動いていないのに、端末上では七―五から七―四へ四十八個移る。それを千紗がゼロにすると、また補充される。数字だけが通路を往復していた。誰も箱を持っていないのに、端末の中では一パレットが夜通し運ばれている。

「七―五から出せば数は足りる」と主任が言う。

千紗は先に自動補充を一時停止した。止めずに七―五からピッキングすれば、端末上の残数が減るたび、さらに幽霊が増える。彼女は注文四十八個を七―五へ再引当し、実物を一箱ずつ数えた。残りも四十八個。千紗は数えた人をもう一人呼び、逆方向から再確認した。数字と棚が初めて同じになった。

廃止した七―四の札を外し、端末には使用停止を登録した。棚替えをした昼勤へ、補充設定も同時に変える確認欄を残す。

午前二時五十分、加湿器は出荷口へ着いた。空の七―四へ、もう四十八という数字は戻らなかった。

千紗が棚卸し表を閉じると、別の通路から声が上がった。

「九―二、在庫がマイナス三十です」

幽霊が消えた夜に、今度は借金のような数字が現れた。千紗は端末を抱え、空ではない棚へ向かった。