泥だらけの靴底

ペルシナの靴は、店頭で最も汚れていた。

彼女が作るのは配達人向けの丈夫な長靴で、飾り窓には並ばない。修理も少なく、買い替え周期が長いため、靴商会での売上寄与は6%。店主は泥の付いた見本を外へ放った。

「壊れない安靴より、季節ごとに売れる飾り靴を作れ」

ペルシナは木型を抱えて工房を出た。靴底には、濡れた石で食いつき、乾いた土では泥を離す細かな溝がある。配達人が転ばず、荷を時間どおり運べるから、商会の注文品も客へ届いていた。

店主は配達人へ艶のある新作を支給した。見た目はよく、広告にも使えた。だが雨上がりの坂で滑り、荷箱が割れた。別の配達人は靴擦れで歩けなくなり、納品が遅れた。客は靴だけでなく、届かなかった服や薬や宝飾品まで注文を取り消した。

配達組合の長が、放り出された泥靴を拾って店へ戻る。

「この汚れは、商品を届けた道の証拠だ」

店主が「配達は外部の仕事だ」と言い返すと、《到着売上盤》が床から立ち上がった。注文を受けた時点ではなく、客の手へ届いて代金が確定した時点まで追う装置だ。服、薬、宝飾品の札から光が伸び、荷車を経て、ペルシナの靴底へ集まった。

「靴屋が他店の売上まで支えたと言うのか!」

盤は泥の跡を文字へ変えた。

《届かなかった品に、売上は存在しない》

配達人たちは艶靴を脱ぎ、傷んだ足を見せた。歩けない者を怠慢と叱った店主へ、到着売上盤は未配達の札を次々と突き返す。対して古い泥靴の溝からは、雨の日にも完了した納品印が浮かんだ。靴が長持ちして再購入が少なくても、履く者が運ぶたび、街の売上は確定していた。店主の飾り窓だけが、何も届けていなかった。

ペルシナは商会へ戻り、飾り窓の中央へ泥靴を置いた。店主は隠そうとしたが、配達組合の者たちが次々と同じ靴を履いて並ぶ。客は宝石より先に、その靴底を見た。

泥の列が、飾り窓から街道まで続いた。

配達人たちは無事に届けた荷の受領札を束で持ち込み、ペルシナの靴を履いた日だけ遅配が消えていると示した。服屋も薬屋も宝飾店も、到着までを自分たちの売上として考えたことがなかったと認める。店主が飾り靴の広告を守ろうとすると、客は美しい靴を否定せず、舞踏会用と配達用を同じ基準で売るなと返した。ペルシナは飾り職人へ、溝を隠さず意匠へ変える案を渡す。ただし配達靴の木型は歩く者の足から採る。店主は泥靴を磨く係へ回され、その汚れが失敗ではなく到着の証だと覚えさせられた。

《真価確定:ペルシナ 実売上寄与94%》

《売上順位:末席→首位/役職:配達靴係→都市流通装備長》