焦げた餃子の端

片桐美砂は、病院を出て二つ先の公園で弁当を開いた。母が朝に焼いた餃子が四個、焦げた面を上にして並んでいる。母には、婦人科の定期検診だと伝えてあった。

本当は、妊娠を終えるために来た。相手とはすでに別れ、育てる選択をしなかった。決めたあとも、正しいとも間違いとも思えない日が続いた。母は孫を望んでいる。もし話せば悲しむだろう。それでも黙っていると、自分だけが秘密の中に残される。

母に許してほしいわけではない。責めないでほしいとも、うまく言えない。自分で選んだのに、母の娘であることへ戻りたい。その矛盾を誰にも話せなかった。

弁当箱の蓋を開けると、にんにくを抜いた肉の香りがした。餃子の底は黒く、歯を当てると固い音がした。母は焼き物をよく焦がす。美砂はいつも黒い端を箸で削り、残していた。

一個目は、焦げた側から食べた。苦みのあとに、柔らかな皮と具が続く。二個目も、黒い部分をよけなかった。きれいなところだけを食べても、一個を食べたことには変わらない。苦い部分だけで、全部の味が決まるわけでもない。

三個目の途中で、急に吐き気がして手が止まった。美砂は深く息をし、残りを箱へ戻す。決めたことを証明するために、四個すべて食べる必要はない。

最後の一個は手をつけず、焦げた面を下へ返した。白い皮に、母が包んだひだが並んでいる。黒い側を隠したのではなく、まだ別の面があることを見たかった。

母への画面を開き、「検診だけじゃなかった。今日は家に帰れないけど、明日話したい」と送った。詳しい言葉は明日へ残した。

美砂は三個目の残りだけを、もう一口食べた。四個目には蓋をした。

母に話したあと、どんな顔をされるかは想像できなかった。美砂は理解だけを求めるつもりもなかった。ただ、決断を隠したまま普段の娘へ戻るのではなく、迷いも苦さも抱えた自分として会いたかった。残した一個は、そのための明日だった。

公園を出るとき、箱は空ではなかった。それでも、朝より少しだけ母のところへ近づいていた。