白い服のカレーうどん
夜番兵エゼルは、白い制服を見下ろし、それから黄色い汁の丼を見た。
「危険すぎる」
「紙の前掛けがあります」
深夜食堂の店主が、胸元へ大きな紙を掛けてくれた。丼には太いうどん、薄切りの肉、長葱。とろみのあるカレー汁から、出汁と香辛料の匂いが立っている。
エゼルの隊では、白い制服は規律の象徴だ。小さな染みでも報告書を書かされる。彼は誰より注意深く、雨の日も裾を汚さない。だがその慎重さのせいで、巡回中に立ち止まって湯を飲むことさえ避けていた。
「汁が跳ねない食べ方は?」
「短く持ち上げて、ゆっくりすする」
店主の助言通りにしたつもりが、一口目で黄色い点が前掛けへ飛んだ。エゼルは息を止める。
「服にはついてません」
「前掛けにはついた」
「それが仕事です」
恐る恐る続ける。うどんはもちもちし、カレーの辛さの奥に鰹出汁の甘さがある。葱を噛むと香りが立ち、肉の脂が汁へ溶けていた。体の内側が、夜明け前の冷えからほどけていく。
二口目では、さらに大きな染みが紙へついた。三口目になると、エゼルはもう数えなかった。
「汚れないために食べなければ、制服はきれいだ」
「でも、着ている人が冷えますね」
その通りだった。彼は今まで、制服を守ることと任務を果たすことを同じだと思っていた。けれど空腹で判断を鈍らせれば、白さなど何の役にも立たない。
店主が小さなご飯を出した。
「残った汁へ入れるとおいしいです」
「さらに危険では」
「今さらでしょう」
エゼルは初めて声を立てて笑った。ご飯を丼へ入れ、匙で混ぜる。米がとろみを吸い、最後は一滴も残らなかった。
七味を一振りした最後の匙は、舌に小さな火を残した。
外へ出るころ、空の端が薄く青くなっていた。前掛けを外せば、制服は白いままだった。ただ袖口に、わずかにカレーの香りが移っている。
交代の番兵へ挨拶し、エゼルは報告書に〈異常なし。食事休憩十五分〉と初めて書いた。紙の黄色い染みは捨てず、小さく畳んで胸ポケットへ入れた。