百合根の白い休日

百合根畑は、地面の下で季節を終える。

地上からは何も見えないが、土中の探り糸が育った球根を測り、白い手袋型の魔法人形が一つずつ掘り上げる。泥を払い、薄皮を傷つけず、木箱へ並べる。箱は昼前に料理屋組合へ転送される。

畑の主アデルは、縁側で爪を磨いていた。宮廷洗濯場で働いていた頃、爪はいつも割れていた。冷水、灰汁、漂白粉。白い作業着は薬品で斑になり、袖口には誰かの血や酒の染みが重なった。王族の衣装が一枚汚れれば夜通し洗い直し、自分の手が腫れても休めなかった。

畑から木箱がせり上がる。

通知鈴が柔らかく鳴った。

《百合根十二箱、料理屋組合が受領。代金入金済み》

暮らしには十分。アデルは磨き終えた爪を陽に透かした。傷がない指先を見るだけで、胸が軽くなる。

洗濯場では手袋を求めると、布を傷めると却下された。畑の魔法人形は最初から白い手袋の形をしている。守りながら働くことは可能だったのだと、その動きを見るたび、遅れて届く証明のように思う。傷つく前提の仕事しか知らなかった手に、ようやく別の働き方が触れてくれたのだ。

そこへ宮廷の白鳩が飛び込んだ。

『戴冠式の衣装に染みが見つかった。今すぐ洗濯場へ戻れ』

元監督官からだ。

『退職しています』

『お前の洗い方でなければ落ちない』

『手順書を置きました』

『読むより、お前を呼ぶ方が早い』

アデルは爪磨きの布を畳んだ。

『その早さのために、私は十年遅く帰りました』

『陛下の式典だぞ』

『私の休日です』

『不敬として記録する』

『どうぞ。今の取引先は爪の状態しか見ません』

鳩が苛立つように羽を鳴らす。アデルは水を一杯飲ませてから、返送の印を押した。

畑では魔法人形が最後の穴を埋め、土を平らにならしている。収穫後の地面には、働いた跡すら残らない。

アデルは爪磨き道具を片づけ、庭の木桶へ湯を張った。香草を浮かべ、両手をゆっくり浸す。

今日は誰の染みも落とさない。湯が冷めるまで、自分の指を休ませるだけにした。