百回目の朝、三人とも帰らなかった

エノラは、世界が滅びる朝を九十九回見た。

鐘が七つ鳴ると黒い門が開く。救うには、剣聖ラザル、魔女ユフィラ、神官ノクスのうち一人と契約し、その力で門を閉じるしかない。

一人を選べば、選ばれなかった二人は別の戦場で死ぬ。

九十九回、順番を変えても同じだった。

ラザルを選んだ朝には塔の空席が焼け、ユフィラを選んだ朝には教会の馬車が戻らず、ノクスを選んだ朝には聖剣だけが瓦礫に残った。エノラは三人の好意を受け取るほど、選ばなかった帰る場所を失ってきた。だから百回目だけは、自分が誰にも選ばれない朝にするつもりだった。

百回目の朝、三人はいつもの場所でエノラを勧誘した。

ラザルは聖剣を鞘ごと差し出す。

「俺の契約者になれ。剣の行き先は君が決めろ」

ユフィラは塔の窓辺から本をどけ、隣を空ける。

「私と来れば門の式を解ける。席はあなたのものよ」

ノクスは教会前に馬車を待たせ、御者へ鐘が止むまで動くなと告げる。

「戦わず逃げる道もある。どの町へでも送ろう」

だからエノラは三人とも選ばなかった。

「私が選ぶと、残りの二人が死ぬから」

初めて真実を話し、単独で門へ向かう。三人を生かすつもりだった。だが契約なしの術は届かず、黒い門が開き始める。

石畳が割れ、エノラは膝をついた。

百回目も失敗だ。

「ごめんなさい」

次のループでは、三人はもう彼女を信じないかもしれない。そう思って顔を上げると、ラザルたちはまだいた。

聖剣が門の右柱を支え、ユフィラの本が左柱の術式を吸い、ノクスの馬車が避難民を運び続けている。

「一人を選べとは言ったが、二人を捨てろとは言っていない」とラザル。

「三つの術を一つに結べばいいだけ」とユフィラ。

ノクスは空になった馬車の扉を開ける。

「次の朝へ行くなら、四人で帰ろう」

エノラは三人の手を取らない代わりに、剣、本、馬車の帰還印を同じ陣へ置いた。

黒い門が閉じ、七つ目の鐘が初めて鳴り終わる。

聖剣は彼女の傍らに残り、塔の席は空き、馬車は教会前で待っていた。

百一回目の朝は来なかった。それでも三人は帰らず、エノラが暮らす家の前に、それぞれの帰還印を置いていった。