私を嫌う百人

瑞希には、彼女を嫌う匿名アカウントが百個あった。

容姿を笑うもの、仕事の失敗を書くもの、過去の恋人を名乗るもの。私は親友として一つずつ通報し、疑わしい人物を探した。

瑞希は一人で眠れなくなり、毎晩私へ通話をつないだ。私が恋人と会う日も、「今日は特に怖い」と泣いた。予定を断るたび、彼女は申し訳なさそうに何度も礼を言った。その弱さを見捨てる人間にはなりたくなかった。

奇妙なことに、投稿は毎朝八時十分に集中していた。どのアカウントも「雰囲気」を「ふいんき」と書いた。瑞希も同じ間違いをするが、真似されているのだと思った。

アカウント同士は互いの中傷にいいねを付け、瑞希が反論すると同時に黙った。彼女は「私の生活を見てる」と怯え、投稿時刻の前には必ず私へ電話した。

「純だけは、私を信じて」

そう言われるたび、私はもっと必死になった。

やがて一人の女性が本名で瑞希を批判した。仕事で迷惑を受けたと、具体的な記録を出した。投稿時刻も誤字も違ったが、巧妙に変えたのだと考えた。私は百個の匿名アカウントの主だと決めつけ、勤務先と家族のSNSを突き止めて拡散した。

女性は退職した。家族の写真まで消えた。瑞希は泣いて私に感謝し、「やっと一人減った」と呟いた。百人いるはずなのに、その数え方だけが妙に具体的だった。

数日後、瑞希の家でパソコンを借りた。パスワード管理画面が開いたままになっていた。

「嫌いな私01」から「嫌いな私100」まで、百個のログイン情報が並んでいた。自動投稿の時刻は八時十分。例の女性のアカウントだけは含まれていない。

「どうして」

瑞希は少し考え、笑った。

「本当に嫌われたとき、誰が味方か分からないでしょ。練習してたの」

「関係ない人を辞めさせたんだよ」

「でも純は、私を選んだ」

彼女には、それがすべてだった。

私は帰ろうとした。瑞希は止めなかった。玄関でスマホが鳴り、見覚えのないアカウントからフォローされた。

百一個目の表示名には、私の本名が使われていた。