空箱を囲む祝勝会

宝箱開けのパオラが最後の錠を外すと、中には何も入っていなかった。

王墓最深部まで三日かけて潜り、毒針を避け、番人を倒した末の空箱。期待された聖剣も金貨もない。

「私の幸運値が低いせいです」

パオラは呟いた。彼女の技能は鍵を開けることだけで、戦闘ではいつも守られている。前の仲間には空箱を引いた夜、「疫病神」と迷宮へ置いていかれた。

パオラの幸運値は測定盤で一だった。それでもクロードは危険な錠を任せ、ネネアは『未来は数値より枝分かれする』と言い、バルガスは罠が外れるたび彼女の頭を軽く叩いた。その三人さえ空箱を見れば考えを変えると思った。

帰路、誰も宝の話をしなかった。クロードは空箱を背負い、ネネアは星を読み、バルガスは最後尾を歩く。パオラの前後だけ、別れを告げるための静けさが満ちていた。

剣豪クロードは箱を担いで地上へ運び、占術師ネネアはギルド受付へ、拳士バルガスは酒場へ向かった。

パオラは地下入口で一人になる。

また同じだ。三人は空箱を証拠に損失を清算し、祝勝会ではなく解散会を開くのだろう。

彼女は鍵束を石段へ置き、町の外へ続く道を選んだ。

背後からクロードの声が飛ぶ。

「鍵を忘れてる」

戻ると、空箱は酒場の中央卓に置かれていた。クロードの長剣が蓋の内側へ預けられ、ネネアは箱底に新しい布を敷き、バルガスは四人分の料理をその周囲へ並べている。

「受付で調べた」とネネアが空箱の側面を指す。「これは王墓の持ち出し禁止箱。中身じゃなく、無傷で開けた箱そのものが特別報酬」

「知らなかった」

「私も今知った」

バルガスは空箱の前の椅子を引く。

「報酬がなくても肉は注文した。お前が来ないから冷めた」

パオラは鍵束を握る。

「次も空だったら?」

クロードは剣を箱から取らず、椅子の背へ外套を掛けた。

「次の箱を入れる」

ネネアは共同倉庫の札を箱へ貼り、バルガスは乾杯の杯を四つ揃える。

共同倉庫の番号は、パオラの鍵束の一番大きな鍵と一致した。

空箱は何も与えなかった。それでも三人が守った中央卓には、パオラが戻るための椅子と鍵穴が残っていた。