終了画面に残る月

真壁は出張先のホテルで、音声配信の終了画面を見ていた。

番組はもう終わっている。黒い画面の中央に小さな月の絵があり、その下で「配信は終了しました」と白い文字が光っていた。

午前一時十四分。ホテルの空調は強くなったり弱くなったりし、白い送風口が一定の角度で風を落とす。窓には雨が当たらず、外壁を水が流れる音だけが遠く聞こえた。小型冷蔵庫は、ときどき箱の中で低く震えた。

配信では、女性が今いる場所の空について話していた。

雲で月は見えないこと。向かいのビルの照明が一つずつ消えていくこと。話の途中、配信者は咳を一度し、水を飲んだ。

そのとき、リスナーの誰かが月の印を送った。

見えない月の代わりのように、画面を上へ流れた。真壁は反応を押さなかった。ただ同時接続の数字が六から七になり、また六へ戻るのを見ていた。

番組の最後、配信者は「眠れる人は眠って、眠れない人は照明だけ少し暗くしてください」と言った。

それで終了した。

真壁はすぐ別の配信へ移るつもりだった。知らない部屋のベッドは広く、隣室の物音もなく、空調の回転だけが自分を置き去りにするようだった。

けれど終了画面の月を見ているうち、画面へ自分の顔が薄く重なった。

窓のカーテンを少し開ける。月はやはり見えない。駐車場の照明が濡れた地面へ丸く映り、清掃用のカートを押す人が一度だけ横切った。車輪の音はガラス越しには届かなかった。

真壁はベッド脇の灯りを一段暗くした。

終了画面を閉じると、月も消えた。空調はまだ回っている。小型冷蔵庫も震える。

ホテルの時計は秒を表示せず、数字だけを一分ごとに変えた。真壁は次の一分を待たない。見えない月も、廊下を横切った人も、自分が眠ったあとまでそこにいる必要はなかった。

ここは自分の部屋ではなく、明日になれば出ていく場所だ。それでも今夜だけは、この借りた静けさを追い払わなくてよい。真壁は枕の位置を直し、誰かの声が終わったあとの部屋へ体を横たえた。