親の罪を書かない名簿

採石刑地ノクスでは、子どもの名簿に親の罪名が添えられていた。

『窃盗犯の子』『反逆者の子』『看守の子』。教室も席も分かれ、囚人の子は後ろで立って聞く。父親が刑期を終えても、子の欄から罪は消えなかった。

新任監督ヴェルダは、名簿を炉へ投げた。

「学校が記録するのは、子どもの名前と必要な支援だけ。親の判決は裁判所に置いてきなさい」

学校費を囚人の食糧から差し引く制度もやめた。町外の建築商が買う切石一台につき銅貨三枚を上乗せし、購入者から徴収する。採石量、税額、机や本への支出は、消せないよう校庭の石板へ彫る。看守長の私邸用石材にも同じ印を付けた。

「罪人の子と同じ机に、私の息子を?」看守長が詰め寄った。

「同じ石を切る町で、学校だけ別の地面に建てる費用はありません。それに、息子さんの成績は席を離しても上がっていません」

見物人の間から笑いが漏れた。看守長は赤くなったが、反論できなかった。

囚人の石工が机の脚を直したいと申し出ると、ヴェルダは無償奉仕にせず、通常の作業点を記録した。看守の妻は古い本を持ち寄り、刑期を終えた女囚は読み聞かせ役になった。子どもたちは校庭の石板へ、自分が欲しい物を小石で投票した。最初に選ばれたのは、罰札ではなく雨除けの屋根だった。

席順は教師が身分で決めず、子どもが毎月くじを引いた。困り事を訴える箱も置き、文字を書けない子は色石を入れればよい。最初の青石は「後ろの席から黒板が見えない」だった。翌日、看守も囚人も一緒に机を半円へ動かし、誰にも背中だけを見せない教室にした。

開校日、教師が新名簿を読み上げる。

「アモ。ベラ。キト。ルーン」

親の罪も役職も続かない。教師は名簿を子どもたちにも見せた。自分の欄に余計な言葉がないことを、本人が確かめられるようにするためだった。

呼ばれた四人は同じ声で返事をした。看守の息子が椅子を半分ずらし、囚人の娘へ教科書を見せる。

校門には、切石で作った新しい板が据えられた。

『この門から先へ、親の鎖は持ち込まない』