角羊の金冠を外す授業
王宮の古角羊クロノは、代々の王子へ知恵を授ける聖獣だった。
ところが今代の王子が近づくたび頭突きをし、家庭教師も三人追い払った。王は「知性を失った」と怒り、角を鎖で固定するよう命じる。
四人目の家庭教師サイラスは、初授業の前にクロノの寝床を訪ねた。
巨大な羊は黄金の角冠を着け、壁へ片方の角を押しつけている。唸るたび、右耳が冠の革帯に潰されていた。立派な装飾の陰で、耳の付け根は赤黒く腫れている。
「教えたくないのではなく、頭が痛いのですね」
王子は鼻で笑った。
「父上が作らせた冠だ。聖獣が嫌うはずがない」
サイラスは反論せず、自分の堅い学帽を外した。額には締めつけの跡が残っている。
「立派な物でも、合わなければ痛いのです。これは最初の授業にしましょう」
クロノの前へ帽子を置き、手ぶらで座る。角羊は床を蹴ったが、サイラスが鎖を持っていないと分かると動きを止めた。
「冠を外す許可を、あなたからもらいたい」
彼が留め金へ触れる前に、クロノは自分から頭を低くした。
革帯は毛と皮膚へ食い込み、外すと血が滲んだ。サイラスは冷たい薬布を当て、耳が自然な位置へ戻るまで支える。王子にも布を持たせた。
「痛い時に命令されると、誰でも腹が立ちます」
王子は初めて黙り、聖獣の耳を傷つけぬよう手を添えた。
処置が終わると、クロノは王子を頭突きしなかった。代わりに鼻先で少年の胸を軽く押し、次いでサイラスの前へ膝を折る。
角に刻まれた古文字が光り、契約の一節が教師の腕へ移った。王はサイラスへ王子教育の全権を与え、見栄えだけの装具を廃した。
王子はその日の学習帳へ、「敬意とは重い冠を載せることではなく、嫌だと言える余地を残すこと」と書いた。綴りを二か所間違えたが、サイラスは直す前に大きな丸を付ける。クロノも鼻先へ墨を付け、紙の端に黒い承認印を残した。
授業後、クロノは金冠の代わりに頭をサイラスの膝へ載せた。灰白の羊毛は午後の日差しを吸って温かく、古い知恵を詰めた頭は書物の山より穏やかに重かった。