銀毛の狼が見張る畑

魔物狩人ティルダは、銀毛の狼を殺さなかったため組合を追放された。

罠にかかっていた子狼を助け、今では大きく育った相棒ルプとともに、森際の捨て農地へ移った。前の開拓者が逃げた理由は、畑じゅうに誰かの鉄罠が残されていたからだ。

初日、ティルダは一列だけ安全にすると決めた。

ルプが鼻を地面へ近づけ、低く唸る。草を分けると、錆びた歯罠が土に隠れていた。棒でばねを押さえ、鎖ごと掘り出す。

一つ、二つ、三つ。

四つ目には兎の白い毛が挟まっていた。ティルダは黙って罠を閉じ、持ち主の印を確認する。組合の紋章だった。

「魔物を増やして仕事を作るためか」

獲物を傷つけ、血の匂いで森の獣を呼ぶ。畑が荒れれば、組合は討伐料を取れる。

五つ目の罠は、ばねがまだ生きていた。ティルダが棒を差し込んだ瞬間、鉄の歯が音を立てて閉じ、木片を半分に噛み砕く。ルプが低く吠えた。彼女は狼の首を撫で、下がらせてから鎖の杭を掘った。錆の下に新しい油が残っている。放置された罠ではない。昨日か一昨日、誰かが仕掛け直したものだ。一本の畝から七つを回収し終える頃には、鉄の重みで背負い袋が肩へ食い込んでいた。それでも足元の土を踏むたび、もう何も噛みついてこない安心のほうが強かった。

夕方、最後の罠を外したところへ組合の使者が来た。

「この一帯に狼の群れが出た。復帰を望むなら、明朝までに討て」

ティルダは掘り出した罠を一列に並べた。全部に同じ紋章がある。

「まず、これを村役場へ運んで」

使者の顔がこわばる。

「何のことだ」

「分からないなら、罠の持ち主に聞けばいい」

ルプが一歩前へ出ると、使者は命令書を落として逃げた。

ティルダは安全になった土へ腰を下ろし、小さな焚き火で芋を焼いた。皮が焦げ、割ると黄色い中身から湯気が噴き出す。塩を振った半分を食べ、残りは冷まして明日の種芋にする。

ルプは畝の端で伏せ、森を静かに見張っていた。

罠のない一列は、何も起きない。

その何も起きないことこそ、ティルダが初めて自分の手で守った収穫だった。