鐘楼に灯る十三番目

時計職人の町では、孤児十二人が工房を転々としていた。細かな歯車を扱える子は置いてもらえたが、手の震えるユユだけは毎週寝床を失った。

町長レオンハルトは、鐘楼の空き宿直室を住居にすると発表した。改修費には、町の時刻証明書へ押す印章料を使う。商取引一件につき銅貨一枚。ただし賃金の受領、婚姻、養子縁組など生活に必要な証明は無料。大商会も小工房も一契約一枚で、同じ契約を分割して逃れた場合は合算する。

徴収件数、無料件数、支出先は鐘楼下の回転板に毎日表示した。町長自身が結んだ石材契約にも、一枚を納めた。

周辺住民は鐘の音で眠れないと心配した。そこで夜の鐘は音を止め、光の明滅で時刻を知らせる。職人組合はその改造を自費で申し出たが、レオンハルトは材料費だけ基金から払い、労賃も記録した。無償奉仕を美談にして、次の人へ強制しないためだ。

数字好きの職人たちは仕組みに夢中になった。時計師は寝室ごとに音量の違う目覚ましを、石工は震動を逃がす床を作った。パン屋は余ったパンを寄付しようとしたが、レオンハルトは定価で買い、会計へ記した。

「善意が途切れても、朝食が途切れない仕組みにする」

部屋割りは時計仕事の腕ではなく、生活時間で決めた。工房を辞めても居住資格は失わない。ユユは作業を求められなかった。働けない日も寝床は変わらない。それでも自分から、灯火の点検を選んだ。手が震えても、油の量を見ることはできる。仕事には相場どおりの賃金が払われた。

宿直室には十二個の灯がともった。ところが入居当日、町門で新たに一人の子が保護された。役人が「定員外だ」と戸惑うと、ユユは積立額の板を指した。

「予備寝台一つ分、残ってる」

帳簿どおり、十三台目が運び込まれた。誰かの特別な許可ではなく、最初から余白を買っていた金だった。

日没、ユユが回廊を一周し、最後の油皿へ火を移す。

鐘楼の窓に、十三番目の灯がともった。

町の時計は、その夜だけ一度多く鐘を鳴らした。