門を通った百一人

検問の門には、逃亡者を嗅ぎ分ける白犬が十頭つながれていた。

城外へ出られなければ、夜明けの粛清で下町は焼かれる。路地に隠れる人々は百一人。老人も、乳児もいる。

ドルネは門の手前で胸を開いた。煤色の皮膚の下には人間だった頃の骨があり、その隙間から黒煙が湧いている。人を一人、煙の中へ隠して門を通せば、白犬にも兵にも見つからない。

ただし一人通るたび、彼の骨が一本燃えて煙になる。

最初の十人で、足の指の骨が消えた。

ドルネは壁にもたれ、煙を細い道にして人々を包んだ。門番の目には、風に流れる煤しか映らない。

二十人目で左足が潰れた。

三十人目で片腕が形を保てなくなる。

人々は彼の身体を通り抜けるたび、咳をしながら礼を言った。ドルネは数だけを返した。

「三十一。三十二。三十三」

数えなければ、誰かを煙の中へ置き去りにする。

五十人を越えると、肋骨が減り、胸が風に揺れ始めた。七十人目で顎の骨が燃え、声が掠れた。

門番が煙を怪しみ、槍でかき回した。穂先はドルネの腹を通り抜け、残った背骨を一本砕いた。白犬が吠える。

彼は自分の頭蓋を少し燃やし、濃い煙を犬の鼻へ流した。

「八十四、八十五……」

記憶も骨と一緒に薄くなる。なぜこの人々を逃がすのか、どこで自分の名を得たのか、分からなくなっていった。

百人目が門を越えたとき、残った骨は胸の中央の一本だけだった。

最後はリゼットだった。粛清の名簿を盗み、人々へ逃げる時刻を知らせた女。彼女だけは煙へ入らず、ドルネの崩れた顔を見ていた。

「その骨がなくなったら、あなたは戻れない」

門の向こうで兵の交代を告げる笛が鳴る。時間はない。

ドルネは最後の骨を指で折った。

黒煙が彼女を包み、門を越えた。

白犬が一斉に駆け寄ったとき、そこには噛む身体がなかった。煙は門柱へ広がり、夜空へほどける。

リゼットは城外から振り返った。

「ドルネ!」

呼び声は煙を揺らしたが、形を結ばない。骨を失った彼には、名を留める場所さえなかった。

朝、百一人は丘の上から燃えずに残った下町を見た。門の上には黒い雲が一つだけ留まり、兵の視界を夜まで塞ぎ続けた。

風が吹くたび、雲の中から掠れた数が聞こえた。

百。

百一。

その先だけは、どうしても続かなかった。