風に光る百本の銀帯

王都葡萄祭まで五日。丘陵園の黒葡萄は、朝ごと半分が空の房になった。

 犯人は群青鳥だ。鐘、案山子、猟犬にも慣れ、夜明けから百羽で降りる。園主は鳥番を五十人雇ったが、人が反対側へ走ると、鳥は笑うように戻ってきた。

 折敷瀬叶は、鏡職人が捨てた細い銀箔布を集めた。

「鳥へ宝石でも見せるのか」

 鳥番頭のガゼルは、叶を試験畑へ追いやった。

 叶は葡萄の列の上へ縄を渡し、腕の長さほどの銀帯を一間ごとに結んだ。帯は固定せず、風で裏返るよう片端だけを縛る。

 日の出と同時に群青鳥が来た。

 先頭の群れが試験畑へ降りかけた瞬間、朝日を受けた銀帯が一斉に閃いた。風向きが変わるたび光の位置も変わり、布がぱたぱたと不規則な音を立てる。鳥は空中で向きを変え、銀帯のない隣の畑へ移った。

「一度驚いただけだ」

 ガゼルは腕を組んだ。

 叶は二つの区画から、同じ百房へ白い札をつけていた。夕方に残った粒を数える。銀帯区画は千八百四十粒中、食われたのが百三十二粒。無対策区画は千八百二十粒中、千七十六粒が失われた。

 二日目、鳥は低く旋回したが、光が一定の場所にないため着地できない。被害は九十四粒。五十人の鳥番が守った別区画では、人件費をかけても四百一粒が食われた。

 三日目には風が弱まったが、帯はわずかな空気でも向きを変えた。鳥が一方向の光へ慣れる前に、次の列が別の角度で閃く。被害は八十七粒まで下がった。

「銀箔は高価だ」

 園主が心配すると、叶は裏面を見せた。鏡を切った後の端布で、職人は処分代まで払っている。百本分が銅貨十二枚。鳥番五十人の一日分は銀貨二十五枚だった。

 ガゼルは自分の働き口を守ろうと帯を外したが、その瞬間だけ鳥が三羽降り、葡萄をついばんだ。帯を戻すと、また飛び去る。効果は誰の目にも明らかだった。

 祭の醸造商は無傷の房を潰し、濃い紫の果汁を舐めた。

「丘陵園の三年分を予約する。条件は、全列へ叶の銀帯を張ることだ」

 鳥番の給金袋は、銀帯製作と設置を行う新しい仕事の前金へ書き換えられた。